今回は「作画 メイジメロウ 原作 花林ソラ」先生の『断頭のアルカンジュ』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『断頭のアルカンジュ』はこんな漫画(あらすじ)
フランス革命前夜の1787年、身分制度を毛嫌いするサン=ジュストは妹のマリーを金持ちの平民と結婚させることにしました。
しかし夫となる男性は経営する製紙工場のため、マリーの処女を貴族に捧げようと画策します。
貞操を守るため逃げ出したマリーだったのですが、全身に重傷を負ってしまいました。
妹の尊厳を汚されたジュストは悪事を働く貴族に制裁を加えることにします。
残虐で凄惨に貴族を処刑するジュストの行動はやがて革命へと繋がっていくことになりました。
愛のためにフランス王国を殺した男の物語を紡いでいく『断頭のアルカンジュ』
今回はフランス革命を題材にしたサスペンス漫画の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
大切な妹の尊厳を守るため革命家となったジュストの壮絶な物語を胸に刻んでください。
『断頭のアルカンジュ』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
サン=ジュストが裏切者を拷問しています。
どうしてジュストが拷問しているかを説明するには、少しだけ時間を遡らなければなりません。
フランス革命前夜の1787年、パリのリュクサンブール公園に男性の視線を集める美少女が現れました。
天使のような美少女に声を掛けたくなった男性が劇場へ誘います。
女性は男性から声を掛けられるために公園を散策していた訳ではありません。
そのため断ろうとする美少女に男性がしつこく劇場へ誘ってきます。
次の瞬間、男性の顔にコインがぶつけられました。
コインをぶつけたのは美少女と顔が瓜二つのジュストです。
ジュストが現れたことで男性たちは逃げていきました。
純粋なマリーは男性の下心に気が付いていません。
それでもマリーは構わないと思っています。
兄との別れを考えると涙がこぼれてきました。
そんなマリーにジュストがお守りを渡します。
1787年、パリは嵐の前の静けさに包まれていました。
当時のフランス王国は厳格な身分制度があり、第一身分に聖職者、第二身分に貴族、第三身分が平民となっています。
つまり2400万人の平民に対してわずか1/120の聖職者と貴族が特権を享受していました。
アメリカ独立戦争で抱えた多額の負債が平民を苦しめ、翌1788年には大飢饉が重なることで王国は革命へなだれ込んでいくことになるのです。
ジュストが従者のジャン・チュイリエを引き連れてパリ市街を眺めていると、貴族がドレスを購入しました。
マリーは髪の毛を売った10リーヴルでジャンを買い取ったのです。
考えるよりも先に行動するところは今も変わっていません。
ジュストだけでなくジャンもマリーが幸せになることを祈っています。
ですがマリーに幸せな未来は待っていませんでした。
製紙工場を営んでいるゼラミールはマリーに素敵な部屋と本棚を用意してくれていたのです。
ジュストが望むように金持ちの平民らしい心配りでした。
ゼラミールがマリーを寝室へ連れて行きます。
そこには見知らぬ男性が待っていました。
工場の経営を安泰させるため、愛人がいたゼラミールは貴族にマリーの処女を売っていたのです。
マリーはこのまま貴族の餌食になってしまうのでしょうか!?
妹想いの優しいジュストと無邪気で純粋なマリーの兄妹愛に心を打たれました。
身分社会のずる賢い生き方に嵌められたマリーはとても可哀想ですね。
天使のために革命家となった男の半生を描いた『断頭のアルカンジュ』
マリーを傷付けられたジュストの復讐が幕を開けていきます。
容赦のない拷問が繰り広げられますよ。
後編
ゼラミールの罠によってマリーが貴族に犯されそうになります。
棚に置いてあった鈍器で貴族を殴ると窓から飛び出しました。
誇りを守ることはできましたが、マリーは大怪我を負ってしまいます。
ゼラミールは貴族にマリーを売ったことを隠しながら結婚を解消しました。
ジュストがマリーの元に駆け付けると、意識を失った状態でゴルゴネイオンを握りしめています。
魔除けは大切な妹を守ってはくれませんでした。
ここからジュストはマリーの看病をしながら、ジャンに任せた情報収集の結果を待ちます。
長男のブランジ男爵はパリに住んでいて、若い娘の処女を好むという噂がありました。
マリーをこんな目に遭わせたのはジュストが毛嫌いする貴族だったのです。
ジャンはこれ以上マリーを悲しませたくありません。
ですがすでにジュストは強い覚悟で復讐することを決意していました。
感情のない冷酷なジュストの表情を見て、ジャンは彼に退く選択肢が残されていないことを悟ります。
ジャンもマリーに救ってもらったので覚悟を決めました。
まずジュストはゼラミールをおびき寄せるため、女装して街に繰り出します。
元々マリーと顔がそっくりなのでゼラミールは女装したジュストをマリーだと勘違いしました。
もしも回復したマリーに真実を話されたら自分の立場がありません。
そこでゼラミールはマリーを力ずくで黙らせることにしました。
しかし待ち伏せていたジャンに殴られ意識を失ってしまいます。
ジュストとジャンはゼラミールを下水道に監禁しました。
パリの下水道は18世紀半ばには見捨てられ無法地帯の地下迷宮になっていたのです。
尻の穴に木材を刺されたゼラミールが助けを求めて大声を上げました。
この状況でもゼラミールはまだ白状しません。
苛立つジュストはハンマーでゼラミールを殴打します。
マリーのことを踏みにじろうとしたゼラミールに怒りの鉄槌が下されました。
すると地位を保つためブランジ男爵に媚びたことを白状します。
ゼラミールは身分社会を賢く生きるつもりでした。
ジュストがコインを指で弾き上げます。
死にたくないゼラミールは神様に裏が出るよう祈りました。
しかし祈りは届かずジュストが掴んだコインにはゴルゴンが描かれています。
最初からジュストにゼラミールを助けるつもりはありませんでした。
こうしてゼラミールの処刑が完了したのです。
処刑を執行したジュストがマリーの待つ家に戻ってきました。
ですが声を掛けてもマリーは反応してくれません。
マリーのため次はブランジ男爵を処刑することにしました。
大切な妹のためなら自分の手が血に染まっても構いません。
ルイ・アントワーヌ・レオン・サン=ジュストは後に身分制度の象徴たるルイ16世をはじめ、数えきれないほどの人々を処刑台へ送り死の天使長と呼ばれるようになりました。
これは天使のために堕天使となった革命家の物語なのです。
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『断頭のアルカンジュ』を読んだ感想
妹のために手を血で染めることにしたジュストの表情にゾッとしました。
深い愛情を持っているからこそジュストは覚悟を決めたのかもしれませんね。
大天使のため堕天使になったジュストが次々と悪を裁いていく『断頭のアルカンジュ』
悪事を働く貴族たちを処刑していくことが革命へと繋がっていきます。
フランス革命について勉強してみたくなるストーリーになっていますよ。
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