今回は「モリエサトシ」先生の『親愛なるA嬢へのミステリー』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『親愛なるA嬢へのミステリー』はこんな漫画(あらすじ)
気がつくと本を夢中になって読んでしまう女学生の綾乃は、親から現実に興味を持ってほしいと思われていました。
そんな理由から断筆中の小説家で探偵も兼ねている親戚の能見啓千(たかゆき)をお手伝いすることになります。
数多くの本を所有する啓千の元でますます現実離れしていく綾乃。
しかし次々と巻き起こる難事件を啓千が解決する姿に、本よりも現実の世界に引き込まれていくのでした。
風変わりな名探偵と女学生の活躍を描いていく『親愛なるA嬢へのミステリー』!
今回は奇想天外なミステリー漫画の魅力について、ネタバレを含みながらご紹介していきます。
謎解きの面白さを是非この機会に体験してみてください。
『親愛なるA嬢へのミステリー』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
読書に夢中な綾乃は本を読むことで様々な体験ができると考えています。
本人は読書を楽しむ状況に満足しているのですが、母親は娘のことを心配していました。
そのため親戚の能見啓千のお手伝いをするよう命じてきます。
啓千は小説家なのですが、現在は警察に協力しながら事件を解決する素人探偵として活躍していました。
こうして綾乃は啓千の元を訪れることになったのです。
幼い頃に会ったことがあるのですが、綾乃には啓千の記憶がありません。
仕方なく啓千の家を訪ねた綾乃に、早速興奮する出来事が起こりました。
お気に入りの作家が書いた小説の旧版が見つかったのです。
大喜びする綾乃は小説のそばにいる啓千に気づいていません。
本に夢中な綾乃はいつの間にか啓千の上に乗っかっていました。
啓千の言葉通り綾乃の気持ちは数多く所蔵されている本に向いているようです。
綾乃に踏まれてしまったため乱れた着物を、啓千は口を器用に使いながら直していきました。
実は啓千が小説家を休業している理由は右手を不自由にしたためペンが握れなくなったためなのです。
綾乃がまだ本に見惚れていると急に啓千が得意の推理を披露し始めました。
実家で食べきれなかった笹寿司を持ってきたと推理したのです。
自らを探偵っぽいと語る啓千。
推理が外れてしまったため、まだ綾乃は啓千の類まれな能力に気がついていません。
結局この日は本を借りるだけになってしまい、綾乃が小説よりも現実に気が向くことはありませんでした。
翌日、啓千から借りた本を遅くまで読んだ綾乃が学校の教室で大きなあくびをしています。
そんな綾乃に同じく読書が大好きな女生徒が声をかけてきました。
荒井というこの女生徒は図書委員を任されています。
いつものように読書の話題で盛り上がる2人だったのですが、すぐそばまで事件の影が迫っていました。
果たして綾乃の近くまで迫ってきているのはどのような事件なのでしょうか!?
読書に夢中な綾乃や、小説家を休業しながら探偵をしている啓千など、魅力的な登場人物が多い作品になっていますね。
ここから展開していく啓千の名推理が魅力なのですが、事件の背後にある人間の切ない感情も魅力的でした。
謎解きの面白さと人の感情を丁寧に描写したストーリーが読者を魅了させている『親愛なるA嬢へのミステリー』!
ノスタルジックな雰囲気を纏った感動的なミステリー漫画です。
それでは啓千の名推理と、独特な考え方の綾乃に注目しながら続きをご覧ください。
後編
綾乃が大好きな金田一耕助は最後の事件を解決すると、アメリカへ渡り消息不明となってしまいました。
本の中に書かれていることは絶対のため、読者はこの現実から逃れることは出来ません。
しかし綾乃は本の余白を想像することは読者の自由だと思っています。
綾乃は金田一耕助のその後を自由に想像していました。
この時の綾乃には啓千の言葉が理解できません。
しかしすぐに啓千が持つ特異さと、抱えている悲しみを知っていくことになるのです
綾乃が啓千の本質を知ることになったのは、学校で起きた殺人事件がきっかけでした。
被害者は学校の司書教諭を担当していた宇田明で、綾乃と女生徒2人が第一発見者です。
宇田は背後から殴られた後に考察されていて、都筑応居という小説家の“月の回転軸”という本を手に持っていました。
啓千がこの事件の協力を依頼されていた頃、綾乃は警察から事情聴取を受けています。
綾乃は宇田が図書館で本を読んでいる姿を見たことがありません。
そのことを警察へ冷静に伝える綾乃は、周囲から現実離れしていると思われていました。
自分でもミステリーの登場人物になったような感覚に陥っていきます。
学校に現れた啓千はそんな綾乃の頬を優しく触ってくれました。
現実に戻ることができた綾乃に対して、啓千が衝撃的な言葉を口にします。
実は都筑応居という作家の正体は啓千だったのでした。
都筑応居として啓千は色々な賞を獲得していて、この学校にも多くのファンがいます。
そんな啓千は被害者に近い人や犯人は、いつも通りの行動は取れないと語りながら事件現場へ向かって行きました。
すると現場の図書室で荒井が警察官にいつから利用できるのか質問しています。
2人がその様子を見ていると荒井がこちらに気がつきました。
“月の回転軸”は社会の底辺で生きる主人公を描いた物語です。
理知的な文章なのですが主人公に寄り添う視線に荒井は勇気をもらっていました。
荒井が啓千に憧れの眼差しを送る中、現場検証が始まっていきます。
実は被害者のシャツの釦が外れていたため、何かの手がかりになるかもしれないと啓千は考えていました。
ここで啓千が荒井の言葉に潜んだ矛盾に気がつきます。
啓千に嘘を見抜かれた荒井は真実を語り始めました。
彼女が釦のことを知っていた理由は被害者に肉体関係を強要されていたためだったのです。
被害者を殺すくらいなら父親を殺すと語る荒井。
果たして宇田を殺したのは本当に荒井なのでしょうか!?
事件の真相に迫っていくここから先の展開と、事件を解決することで悲しみに打ちひしがれていく啓千の姿は実際に漫画を読んでお確かめください。
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『親愛なるA嬢へのミステリー』を読んだ感想
とてもレベルの高いサスペンス漫画だと思いました。
事件を解決していく中で啓千が小説家を辞めることになった複雑な事情が明らかにされていくところが非常に面白かったです。
完成度が高いヒューマンドラマの要素も兼ね備えた『親愛なるA嬢へのミステリー』!
ミステリー漫画ファンなら読まないと損をしてしまう傑作です。
是非この機会に秀逸な物語を読んでおいてください。
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