今回は「臨床心理士 奥田健次 漫画 武嶌波」先生の『マンガ 奥田健次の出張カウンセリング』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『マンガ 奥田健次の出張カウンセリング』はこんな漫画
自閉症の子どもを抱え苦しむ家族たち。
そんな困り果てる家族たちを救っていくのが、臨床心理士の奥田健次さんです。
オリジナリティーのある診療方法と、子どもと家族の状況を冷静に分析していくため、患者やその家族から厚く信頼されている奥田健次さん。
この漫画は彼が出張カウンセリングをするきっかけとなったエピソードと、自閉症の様々な事例と対処法を紹介しています。
実話に基づいているからこそ多くのことを学ぶことができる『マンガ 奥田健次の出張カウンセリング』!
今回はこの感動作の魅力を、ネタバレを含みながらご紹介していきます。
是非この機会に『奥田健次シリーズ』の素晴らしさに触れてみてください。
『マンガ 奥田健次の出張カウンセリング』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
作曲家の父親とピアニストの母親との間に生まれた奥田健次さん。
幼かった頃、彼の父親は不倫をしていたためほとんど家に帰ってきませんでした。
そのため幼児期の彼にとって、父親の記憶は2つしかないそうです。
しかし2歳になり弟が生まれた頃、両親が離婚してしまいました。
その後、日曜学校で奥田さんは一緒になって遊んでくれる優しい男性と出会います。
この言葉がキッカケかどうかは分かりませんが、母親はこの男性と結婚しました。
実はこの再婚が奥田さんの人生のターニングポイントとなったのです。
優しかった男性は父親になると、厳しいしつけの一環として暴力を振るい始めました。
食事中に肘をついていると殴られ、片付けが上手くいかないと殴られる。
奥田さんはそんな幼少時代を過ごしていきました。
しかしどういう訳か、父親は弟を殴ることはしません。
いつも殴られるのは奥田さんだけだったのです。
そして7歳になった奥田さんには、今まで以上に過酷な虐待が待ち受けていました。
デパートに買い物へ行った時、弟とクレーンゲームに夢中になり両親とはぐれてしまいます。
父親から覚えとけと言われ震え上がる奥田さん。
恐怖を感じた奥田さんは、家に帰らず弟を連れて西宮から芦屋まで歩き続けました。
しかし夜になると行き場がなくなり、近くの消防署に駆け込みます。
迎えにきた父親に消防士が叱らないでと言ってくれたので、ホッと一安心する奥田さん。
ですが家に帰るといつも以上の暴力が待ち受けていたのです。
顔面が真っ赤に腫れ上がるまで殴られ、止めに入った母親も突き飛ばされてしまいました。
この時、母親はあまりにも強い衝撃により肋骨を折ってしまいます。
当時の社会では血の繋がりがない父親が暴力を振るう行為は、教育熱心と受け止められていた傾向があったそうなのです。
そんな社会的風潮と虐待に耐えられなくなった奥田さんは、家出と万引きを繰り返していき学校にあまり行かなくなっていきました。
しかし友達とはよく遊んでいて、特に野球が大好きだったそうです。
奥田さんが8歳になると妹が生まれました。
妹の世話をすることが好きだった奥田さんは、お小遣いを貯めてよく絵本を買ってあげていたそうです。
そしてこの頃から年に一度、実の父親が指揮をするコンサートに連れて行ってもらえるようになりました。
中学1年生の時、このコンサートで父親と再会した奥田さん。
家族そろって涙を流しながら再会を喜び合いました。
ここからイジメや不登校を経験しながら奥田さんは成長していきます。
苦学生として大学院まで進学すると、最初に書いた論文が学会で賞を受賞しました。
自らをこう分析するように、講義などで教授たちに論戦を仕掛けていきます。
しかしそんな生意気な奥田さんを気に入ってくれる教授が現れました。
この教授の誘いによって、大学で本格的に研究と臨床を開始していきます。
そんな中でも今まで担当していた病院での仕事を放りだす訳にはいかなかったため、大学の勤務と並行して全国各地を訪問した奥田さん。
休みなく働きながらも、学会では先輩達に食って掛かっていました。
するとあるシンポジウムで、運命的な出会いを果たすことになります。
奥田先生の人生を変えた出会いとはどのようなものだったのでしょうか!?
臨床心理士として多くの子どもとその家族を救い続けている奥田健次さん。
彼が幼少時代に虐待を受けていたと知りとても驚いてしまいました。
それでも自分の人生を冷静に振り返ることができる奥田さんは、とても人間力に満ち溢れた人だと思います。
彼のルーツと診療方法を丁寧に伝えてくれる『マンガ 奥田健次の出張カウンセリング』!
ここから奥田先生の強い信念と、自閉症の子どもの診療を具体的な事例を挙げながら紹介してくれます。
奥田先生ならではの独特な診療方法に驚いてみてください。
後編
奥田健次さんはある学会で長畑先生という人物と出会いました。
二人は学会が終わると一緒に食事をすることにします。
この食事会で奥田さんは長畑先生から重大なことを指摘されました。
これまで難治の症例としてトゥレット障害に関わってきたのですが、自分がそうだったとは思いも寄らなかったようです。
その違いとは彼らには思い付いたことを実行してくれるブレーンのような存在がいることでした。
当時の奥田先生にはこのようなブレーンはいなかったのです。
その後、長畑先生は永眠してしまったため、奥田さんにはこの言葉が遺言として心の中に刻み込まれていきました。
こうして臨床心理士としての立場を確立させていった奥田さん。
いつものように悩める親子の元へ向かって行きます。
ある日、奥田先生に知的障害のある自閉症と診断されたエルモくんの母親が悩みを相談しにやって来ました。
現在3歳6か月のエルモくんは一人でトイレに行けないため、いつまでたってもオムツを外すことができません。
同年代の子はとっくにオムツを外しているため困ってしまっているお母さん。
そのため奥田先生に悩みを相談しに来ていたのです。
オムツの本来の目的が掃除の回数を減らすための手抜きだと語る奥田先生。
こうしてエルモくんのトイレトレーニングが始まっていきました。
奥田先生が母親から詳しい事情を聴くと、エルモくんは今までオムツの中でしか大便も小便もしたことがありません。
ここで奥田先生はエルモくんの症状を説明していきます。
奥田先生によると今までオムツの中でしか排尿をしてこなかったエルモくんは、その行為に強いこだわりを持ってしまったそうなのです。
母親はエルモくんをトイレに行かせようとしているのですが、激しく抵抗されるため諦めていました。
しかし奥田先生に言わせると、この行為が問題を大きくしていたのです。
奥田先生の言う通り、エルモくんは以前よりもトイレを警戒するようになっていました。
オシッコを空中に飛ばすことだけでなく、トイレ自体も怖がるようになったエルモくん。
エルモくんはかろうじて保育園のトイレなら入れる状況でした。
その他のトイレは近づくと音を怖がるようにして耳を塞いでしまいます。
正しいトイレの仕方が覚えられなかった場合、責任を取って切腹すると言う自信満々な奥田先生。
母親はこの言葉を信じて正しいトレーニング方法を教わることにしました。
果たして奥田先生が教えるトレーニング方法はどういったものなのでしょうか!?
ネタバレはここまでになりますので、驚きの診療方法は実際に漫画を読んでお確かめください。
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『マンガ 奥田健次の出張カウンセリング』を読んだ感想
前作の『拝啓、アスペルガー先生』が面白かったので、この作品も読んでみることにしました。
読み終えると期待通りの満足感を味わうことができましたよ。
自閉症という難しい病気で困っている家族たち。
奥田先生はそんな家族たちにとっての希望の光だと思います。
決して甘やかすことをせず、信念を貫く彼の診療方法からは多くのものを学べる気がしました。
慢心することなく悩める家族と真摯に向き合う臨床心理士の姿を描いた『マンガ 奥田健次の出張カウンセリング』!
この物語の中では奥田先生のパーソナルな部分も紹介してくれているので、より親近感を持つことができると思います。
堅苦しくならず漫画ならではの読みやすさが魅力的なこの作品を、1人でも多くの人に読んでもらいたい感じました。
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