今回は「奥橋睦」先生の『最果てのパラディン』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『最果てのパラディン』はこんな漫画(あらすじ)
生きていくことに挫折した男が最期を迎えた時、淡い灯火のようなものを見た気がしました。
次の瞬間、男に新しい人生と不思議で歪な家族が与えられます。
新世界でウィリアムという少年に生まれ変わった男はミイラのマリー、スケルトンのブラッド、そしてゴーストのガスという3人のアンデッドと暮らすことになりました。
どうして人間がアンデッドと暮らすことになったのかは分かりません。
それでもウィリアムは3人のアンデッドに見守られながら、この新たな世界で生き直すことを決意します。
美しい世界の中で大きな愛情を受けながら少年が成長していく『最果てのパラディン』!
今回は大人気小説をコミカライズした物語の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
王道のファンタジーをじっくりとお楽しみください。
『最果てのパラディン』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
男は何かのはずみで人生をしくじってしまいました。
しかし記憶が曖昧なのでどこで何を失敗したのかは覚えていません。
失敗から立ち直したいのですが新たに踏み出す気力がなく、そんな男を周囲の人間は腫れものを触るように接してきます。
責めてくれたらもう少し楽だったのかもしれません。
次第に男は死にたくなってきたのですが、死ぬことができるほどの激情は残されていなかったのです。
意識が徐々に薄れていき最期の瞬間を迎えた時、男は淡い灯火を見たような気がしました。
神の名は伝わっていません。
今では始祖神など様々な名前で呼ばれています。
駄々をこねるウィルだったのですがガスの説明を聞く事にしました。
ガスの話によると世界を作りその美しさに満足した神は良しと呟いたそうです。
ただし良しなるものを作るということは、悪しなるものを作ることでもありました。
こうして悪意や悪神が生まれてしまったのです。
たとえ神であっても発した言葉を口の中に戻すことはできません。
その結果、世界を創造した神は害され生と死が誕生し、多くの神々による神話の時代が幕を開けました。
今では天地創造に使われた“ことば”と“しるし”が“創造のことば”と呼ばれています。
ウィルは木製の四本脚で作られた丸椅子を見れば、それがどんな色をしていても自分は椅子だと判断すると説明しました。
つまり頭の中で四本脚の丸椅子は椅子だというラベルを貼っているとウィルは考えているのです。
ただしラベルを貼ったままにすることはありません。
様々な物に言葉というラベルを貼りつけていきカテゴライズすることで、それぞれを観念化して認識しやすくするのです。
カテゴライズすれば四本脚の丸椅子を見て、四つの棒と一枚の丸板だと認識することはありません。
ウィルは言葉には曖昧なものを区切る力があると考えていました。
言葉の力を説明したウィルが狩りに出かけます。
狩りは順調に進んでいき鳥を仕留めることができました。
その帰り道、大きな岩を見つけたウィルは言葉を使ってみたくなります。
岩に向かって分かたれるという意味の言葉をぶつけました。
すると岩は見事に割れてくれたのですが、その反動で分かれた岩がウィルの方へ転がってきます。
慌てて逃げるうちに転んでしまったウィルは池の中に落ちてしまいました。
勝手に言葉を使ってはいけないので叱られてしまうかもしれません。
果たしてマリーはウィルにどんな態度で接してくるのでしょうか!?
ガスの問いかけに応える姿からウィルの高い知能指数が表現されていますね。
確かに言葉はカテゴライズすることで人間は物を観念化していると思いました。
セリフの一つ一つが哲学的な『最果てのパラディン』!
絵も上手なのでとても読みやすい漫画に仕上がっています。
ウィルのことを庇護するアンデッドたちの優しさに心を打たれてください。
後編
びしょ濡れになってしまったウィルが屋敷に帰ってきました。
くしゃみをしながらこっそり部屋に向かいます。
しかしすぐに見つかってしまいました。
三羽の鳥を見せるとマリーに渡してから食事にすると言われます。
ウィルは着替えたいので部屋に行こうとするのですがそうさせてもらえません。
寄り道したことは事実です。
しかし悪気があったわけではありません。
ブラッドが戦士の在り方を教えてくれていることをウィルは理解しています。
正しく成長しているウィルの頭を撫でると2人は食堂へ向かいました。
マリーが慌てて救急箱を取りに行きます。
その間にウィルはガスにお願いをすることにしました。
ついうっかり言葉を勝手に使ったことを打ち明けてしまいます。
まだ一人の時に言葉を使うことは許されていません。
ガスは魔法に頼らないでお金に頼る方が平和的で安全だと教えます。
人か道具をお金で買えば魔法など使う必要がありません。
お金に関する考え方が違うので2人は言い争いになっていきます。
そこにマリーが戻ってきたので手当してもらうことになりました。
優しいミイラのマリー、戦士としての在り方を学ばせてくれるスケルトンのブラッド、そして魔法に詳しいゴーストのカス、このアンデッドの3人が不思議で歪なウィルの家族です。
なぜアンデッドと暮らしているかはウィルにも分かりません。
その他にも分からないことや不思議なことはたくさんあります。
例えば食事をするといってもご飯を食べるのはウィルだけで、アンデッドはご飯を食べません。
3人とこの世界には秘密が多く人間はウィルだけなのですが、いつの間にかアンデッドの言葉を理解するようになっています。
ただ多神教の世界に古から存在する有名な神々についてはマリーが教えてくれました。
神々はそれぞれ異なるものを司っていて、成人の儀までにウィルも仕える神を見定めておかなければなりません。
マリーは地母神マーテルを信仰しているそうです。
現在のウィルは輪廻を司るグレイスフィールという神が気になっていました。
グレイスフィールは灯火で道を照らし神々の野である次の生へ導いてくれるそうです。
お祈りを終えるとウィルは外の景色を見に行きました。
しかし屋敷の周りには廃墟しか存在していません。
この世界に生を受けてから7年しか経っていませんが、ウィルとアンデッドたちは家族としての絆を深めています。
しかし秘密を抱えているのはアンデッドたちだけではありません。
どういうわけか知りませんがウィルには前世の記憶があるのです。
一体この秘密は新たな世界で生き直したこととどんな関係があるのでしょうか!?
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『最果てのパラディン』を読んだ感想
不思議な世界で絆を深めるウィルとアンデッドたちの姿から優しさが感じられる物語ですね。
お互いに秘密は抱えていますが深く詮索しない様子にも思いやりの精神を感じ取れました。
不思議で歪な家族の愛を描いた『最果てのパラディン』!
様々な伏線が張られているので続きがすぐに読みたくなりますね。
お気に入りのSFファンタジー漫画がまた1つ増えて嬉しくなりました。
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