テセウスの船のネタバレ(漫画)!東元先生の描く物語の魅力とは?

今回は「東元俊哉」先生の『テセウスの船』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。

※記事の中にはネタバレ部分がありますので、お先に立ち読みをお勧めします!

『テセウスの船』はこんな漫画

1989年6月24日、北海道の音臼という村の小学校で児童16名、学校職員5名の合わせて21名が死亡する毒殺事件が起こりました。

その犠牲者の多さから史上最悪の殺人事件と呼ばれます。

この事件の犯人は村の警察官だった佐野文吾という人物でした。

しかし彼は死刑判決を受けても自らの無罪を主張し続けます。

そんな佐野の事件を調べ直すことにしたのは、父親に会ったことのない彼の息子・田村心でした。

事件の真相に迫ろうとする心が現場を訪れると不思議な現象が起こってしまいます。

主人公が過去の真実と向き合う姿を描く『テセウスの船』

本格ミステリー漫画の醍醐味をじっくりと味わってみてください。

『テセウスの船』の魅力紹介(ネタバレ含む)

前編

テセウスの船とはパラドックス(矛盾)のひとつです。

その昔クレタ島から帰って来た英雄テセウスの船を後世まで保存するため、修復作業が行われたのですが部品を新しくするうちに当初の部品は無くなりました。

ここからがパラドックスです。

果たしてこの船は最初にテセウスが乗ったものと同じと言えるのでしょうか?

そしてこれを人間に置き換えるとどうなってしまうのでしょうか?

人間の体内では日々3千億個の細胞が生死を繰り返しています。

つまり数か月後にはほとんどの細胞が入れ替わっていることになるのですが、人間が別人になっていることはありません。

この物語の主人公はそんなパラドックスに悩む田村心という青年です。

彼の父親は音臼小学校無差別毒殺事件の犯人として死刑宣告を受け、現在も服役中でした。

ある日の夜中、眠れない心はネットの投稿を調べています。

「大丈夫そうだ・・・BBSにも目立ったことは書かれていない」

加害者家族である自分のことを検索しているようです。

すると妊娠中の妻・由紀が目を覚ましました。

「由紀・・・どうした!?大丈夫!?」
由紀
「うん・・・ちょっとお腹痛くて」

妻の体調を気に掛ける心は、家事などを代わりにしていました。

そして家事が終わると妻のお腹の中の子にハーモニカを吹いて聞かせます。

「新しく作ったんだよ、ハンス・ジマーのパクリだけど」
由紀
「あはははは!変な曲!」
「由紀の両親は出産の時来てくれるって?」
由紀
「ううん・・・ウチは仕事休めないし難しいって、でもね心のお母さん来てくれるって言ってたよ!」

仲睦まじい二人ですが、毒殺事件の影響は少なからずあるようです。

心と母親は事件のことが周囲にバレるたびに引っ越しを繰り返してきました。

そのため借金が重なり母親は寝ずに働いていたのです。

由紀
「親孝行してあげたいよね・・・お義母さんだってやりたいこととか本当はあったんだろうし・・・心・・・あなたもよ」
「俺は・・・夢はもう諦めた、殺人犯の息子じゃ無理なんだよ」

ここで由紀は自身が調べた毒殺事件のスクラップを心に見せることにします。

実はこの事件が起こる前、音臼村では不可解な事件がいくつか起きていました。

心の父親は事故として処理されたこの不可解な出来事を、唯一事件として捜査していた人物だったのです。

しかしその矢先に毒殺事件が起こってしまったのでした。

そのことを由紀は心に伝えるのですが、彼は過去のことについて触れようとはしません。

「もういいよ由紀・・・俺さ今までずっと思ってた、こんな過去なければいいのに、もしも別の過去だったらどんなによかっただろうって、でも俺今幸せだよ」

由紀と生まれてくる子供が今の心にとって全てだったのです。

しかしこの先に最悪の不幸が襲い掛かることを、この時の心は知る由もありませんでした。

過去の毒殺事件の影に怯えながら生きている心。

それでも由紀との幸せな生活が彼の精神状態を安定させています。

どこまでも加害者家族というレッテルがつきまとう心の表情が印象的な『テセウスの船』

ここから物語は毒殺事件の真相解明へ少しずつ動き始めます。

心が事件と向き合うきっかけとなった出来事に注目しながら続きをご覧ください。

後編

心が仕事をしていると由紀から電話がかかってきました。

由紀
「陣痛来て急遽入院することになったの・・・今夜の内に産まれそうって、一通りの荷物用意してあるから病院に持ってきてくれる?」
「わ・・・わかった!すぐ向かう、頑張ろうな!すぐ行くから」

電話を切ると心は大至急病院に向かいます。

そこで由紀の出産に立ち会うのですが、子供を無事に産み終えると彼女はそのまま天国へ旅立ってしまいました。

突然のことに泣き崩れる心。

さらにこの後、彼に追い打ちをかける出来事が起こりました。

由紀の葬式の最中に、彼女の父親から死の原因が心のせいだと責め立てられてしまったのです。

殺人犯の息子との結婚を最後まで認めなかった由紀の父親。

そのため産まれてきた子供まで引き取ると言い出します。

父親が逮捕された日から、心と母親は加害者家族という毒に支配され続けてきました。

「この毒は一生消えることはないのだろうか・・・?だとしたらこの子の父親は俺じゃないほうがいいんじゃないか?」

子供には自分と同じ苦労をさせたくないため、義父の言うとおりにするべきか悩む心。

しかし子供が見せる笑顔が彼の悩みを吹き飛ばしてくれました。

「この子の父親は俺しかいない、この子を何がなんでも守っていく、由紀の分まで強く生きていこう」

ここから心は由紀からの最期のメッセージを受け取るかのように、彼女が調べていた毒殺事件の真相を調べ始めます。

由紀のスクラップには冤罪という言葉が残されていて、その言葉が心の背中を後押ししました。

「俺・・・佐野に会ってくる、21人を殺した俺の父親に会ってくるよ、佐野が冤罪ならこの子は取られなくて済むんだ、俺と同じ思いさせないで済むんだ!」

母親に力強い宣言をした心は、父親に会う前に事件現場を見に行くことにしました。

音臼村は当時1200人ほどが住んでいたのですが、現在は廃墟となってしまっています。

さらにダム建設が進んでいるため、数か月後には水の中に沈むことになっていました。

事件が起こった小学校に建てられた慰霊碑の前に立つ心。

すると辺り一面が深い霧に覆われ始めます。

その霧に包まれた心は意識を失っていきました。

「寒い・・・ここ・・・どこだ・・・?」

目を覚ました心が立っていた場所は、1989年の音臼小学校前だったのです。

過去にタイムスリップしてしまった心。

ここから彼は史上最悪の殺人事件の真相に迫っていくのでした。

心が迫る事件の真相は、是非漫画をご覧になって衝撃を受けてみてください。

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2021.02.01

『テセウスの船』はこんな人にオススメ

サスペンス漫画やミステリー漫画が好きな人にオススメの作品です。

過去と現在をつなぎながら事件の謎を紐解いていくストーリーは、読み応え抜群の仕上がりとなっていますよ。

心が事件の真相に少しずつ迫っていく様子は、読んでいてドキドキが止まらなくなります。

漫画というジャンルを超えた魅力が詰まった『テセウスの船』

圧倒的な緊張感を是非実際に体験してみてくださいね。

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