今回は「カジカ」先生の『繭の宴』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『繭の宴』はこんな漫画(あらすじ)
昭和35年の兵庫県に蚕を育てている老人がいました。
養蚕業を廃業した老人は蚕の血を途絶えさせないため、孫娘のユリを神聖な蚕として育てることにします。
外の世界を知ることなく美しい少女に成長したユリは、同年代の少年と出会い柵越しの会話を楽しむようになっていきました。
しかし心を病んだ干すの呪縛がエスカレートしていき少女の人生を波乱なものに変えてしまいます。
狂気に晒された少女の悲しき運命を描いていく『繭の宴』！
今回は恋愛漫画とヒューマンドラマが融合した物語の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
仄暗い繭の中で神様と崇められる少女の苦悩を感じ取ってみてください。
『繭の宴』の魅力紹介（ネタバレ含む）
前編
昭和35年、養蚕業を営んでいる老人が無念そうに蚕を見つめています。
蚕をまるで神様のように崇めている老人は、血を絶やさないため不気味な計画を立てました。
その計画とは孫娘を神様として育て上げることだったのです。
計画をスタートさせてから8年が経過しました。
美少女に成長したユリは兵庫県の天上家というお屋敷の中で暮らしています。
しかし屋敷の中で自由が許されている訳ではありません。
ユリは窓が一つしかない部屋で身体を拘束されながら生活しているのです。
目の前には一枚の葉っぱと蚕が入れられた箱が置かれていて、ユリは蚕の様子を眺めていました。
蚕がゆっくりと葉っぱに近付く姿を見ながら、自分が祖父の蚕であることを実感します。
ここで部屋の扉をノックする音が聞こえてきました。
部屋の中に入ってきた祖父はおはぎのようなものをユリの前に差し出します。
残さず食べなさいと言われたユリは手を縛られているため、お盆の上にあるおはぎを口だけ使いながら食べ始めました。
まるで蚕のように食事する孫娘を祖父は満足そうな表情で見つめています。
人間らしいとは言えないのですが、ユリにとってはこの食事スタイルが日常化していました。
食事が終わると祖父がユリに頭巾を被せます。
そして手を縛った状態のまま屋敷の外へ連れて行きました。
頭巾を被って外で遊ぶことも天上家にとっては日常的な光景です。
しかし世間からは異常だと思われていました。
その証拠に柵の外からユリの姿を始めた少年が怯えています。
怯える少年を母親が連れ戻していきました。
母親の話によると天上家の家長は戦争で心を病んでしまったそうなのです。
そのため村の住人は誰も天上家に近付こうとしません。
玄太という少年は奇妙な格好をしたユリに興味を持ったようです。
ですが母親は天上家に近付くことを許しません。
ユリには2人の会話が聞こえているのですが黙ったままです。
近くで祖父が見ているため声を出すことはしません。
この従順な態度が祖父を喜ばせます。
精神が崩壊している祖父にとってユリは本物の神様なのかもしれません。
ユリは自分が神様であることと、祖父に蚕として飼われている事実を受け入れています。
天上家には祖母もいるのですが祖父に逆らうことはできません。
そしてユリは両親がいるかどうかも教えてもらっていませんでした。
このような事情から祖父の異常な行動を止める人間は天上家には存在していないのです。
果たして異常な事態はいつまで続いていくのでしょうか！？
蚕を神様として崇めることは百歩譲って理解することができますが、孫娘を神様として育てる祖父の考えは全く理解できませんね。
自分が蚕として飼われていることを理解しながら受け入れているユリはどのような気持ちでいるのでしょうか？
精神を患った祖父の狂気に包まれる少女の非運を表現した『繭の宴』！
玄太という少年と出会ったことがユリの運命を少しずつ変化させていきます。
微妙な心の変化を見逃さないでください。
後編
いつものようにユリが部屋で待っていると祖母がおはぎを運んできました。
この日は祖父が病院に行っているため祖母が代わりを務めているのです。
祖父がいない日は外に出ることを許されていません。
そのため祖母は断ろうとするのですが、蚕のように食事をしているユリを見てると気分が変わってきます。
少しの時間だけという条件でユリを外に出してあげました。
外に出ると柵の向こう側に玄太がいます。
玄太はほふく前進をしながら柵の向こう側まで侵入していました。
そんな玄太にユリが気になっていたことを質問します。
本気かふざけているのか理解できないため玄太は何も答えることができません。
しかし神様だという言葉が信じられないためふざけていると解釈しました。
不機嫌になったユリが玄太に背を向けます。
立ち上がったユリの足元がヨロヨロしているのを玄太は見逃しませんでした。
これまでユリは女子と呼ばれたことなどありません。
女子という言葉に胸の高鳴りを感じたユリはその場に座り込みました。
玄太を嫌いと言いながらこの場を離れようともしません。
胸の高鳴りと後ろめたさを感じていると玄太が名前を聞いてきました。
少し外に出過ぎたため疲れたユリが家へ戻っていきます。
こうして玄太との出会いによってユリの感情に変化が現れました。
自分は神様でありながら女子であることを知ったユリは、玄太が女子ではないことに気がついています。
外の世界を知らないユリは男子という言葉を知りません。
神様でありながらユリには自由が許されていないのです。
この状況を変えてくれるのは玄太なのでしょうか！？
それとも別の人間がユリを繭の中から救い出してくれるのでしょうか！？
少女が背負った運命がどのように変化していくかは実際に漫画を読んでお確かめください。
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『繭の宴』はこんな人にオススメ
強烈なインパクトがあるストーリーになっているので、漫画を読んで衝撃を受けたい人にオススメです。
狂気がエスカレートしていく祖父の異常な行動に注目してみてください。
蚕のように飼育される少女の人生を描写していく『繭の宴』！
不気味なのにドラマチックな内容になっています。
異常な愛憎劇をじっくりとお楽しみください。
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