今回は「吉村旋」先生の『性別「モナリザ」の君へ。』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『性別「モナリザ」の君へ。』はこんな漫画(あらすじ)
普通の人間は幼少期を性別のない身体で過ごしていき、思春期を迎える頃に自分の性別がはっきりとしていきます。
そして性別がはっきりとした中で子供は男性か女性へ姿を変えていくのが当たり前となっていました。
しかしこの物語の主人公であるひなせは何も変わることなく18歳の春を迎えてしまいます。
親友たちがはっきりと男女の姿に変貌していく中、取り残されていくひなせはいつの間にか自分の身体に慣れてしまっていました。
そんなひなせに待ち受けていたのは自分が男女どちらなのか選ばなければならない残酷な現実だったのです。
イタズラ好きの悪魔に惑わされるかのような運命を背負ってしまった主人公を描いた『性別「モナリザ」の君へ。』!
今回は色々と考えさせられるファンタジー漫画についてネタバレを含みながら魅力をご紹介していきます。
性という概念に振り回される主人公に注目してみてください。
『性別「モナリザ」の君へ。』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
この世界にはイタズラ好きの悪魔が人々を惑わすために残していった忘れ形見が3つあると言われています。
1つはヴァイオリン、もう1つは鏡、そして最後の1つは世界で最も有名な絵画のモナ・リザです。
このような悪魔の忘れ形見がある世界において人間は幼少期を性別の無い身体で過ごしていました。
そして人間は12歳になる頃、自分自身がどちらの性別になるのか希望した方を選択する事で身体が男女へ変貌していきます。
これが普通のメカニズムとなっていました。

ひなせの身体はまだ男女のどちらか決まっていません。
しかしこの状況を18歳になった現在はどうでも良いと思うようになっています。
そんなひなせのことを親友である男子のしおりと女子のりつが迎えに来てくれました。
しおりとりつが楽しそうにしながら登校する中、ひなせは自分の境遇について考え込んでしまいます。

自分は少しだけ人よりも成長が遅いだけだと思っていました。
いつの日か自分もみんなと同じように性別が決まると思っていたひなせ。
ですがいつまで経っても性別が決まる日は来なかったのです。

昔から仲が良かったしおりとりつが形を変えたことも今では受け入れていました。
この状況をひなせは周囲も自分も慣れたのだと思っています。
男と女へ姿を変えた2人なのですが、昔と変わらず仲良くしてくれている事に満足していました。
そんな3人が学校へ到着すると美術の授業が始まります。
授業はモナ・リザについての講義となりました。
モナ・リザはレオナルド・ダヴィンチが完成させた世界一有名な絵画と言われています。
しかしモナ・リザには多くの謎が残されていました。
まずモナ・リザの表情は笑っているように見えるのですがよく見ると口角は上がっていません。
なので口元だけを見るとモナ・リザは微笑んではいないのです。
ですが一度絵画から視線を外してから全体を見ようとすると何故か笑っているように見えるため、一般的にモナ・リザの微笑と呼ばれるようになりました。
さらにモナ・リザは現在でも性別が謎のママとされています。
恐らくは女性だと言われているのですが確実だとは言えません。
例えばモナ・リザのモデルがダ・ヴィンチの愛人だという説なども浮上しているのです。
こうしたことからモナ・リザは両性具有の美を込めたのではないかという説が有力視されてきました。
両性具有というのは男女両方の性を備えた稀有な存在で、古くから神様が人間を区別する前の幸福な統一体と称されています。
そのためレオナルド・ダヴィンチは両性具有を完璧な中立性という美しさだと考え、深く愛していたのではと推測されているのです。
まるでひなせのことを表しているようなモナ・リザ。
この授業をきっかけにひなせの運命が大きく揺れ動いていくことになるのでした。

男性でも女性でもない主人公が苦悩する様子と全てを諦めた姿に共感することができました。
またモナ・リザを例に挙げながら両性具有について説明するシーンが分かりやすかったです。
一般の人間と隔たりができてしまった主人公の葛藤を描写していく『性別「モナリザ」の君へ。』!
性別について考えさせられる哲学的な物語になっています。
物語の世界に入り込みながら続きをご覧ください。
後編
美術の授業が終わるとひなせが黒板を消すことにします。


ひなせは帰ってしまった生徒の代わりに黒板をキレイにしていました。
するとしおりが身長の低いひなせのため、黒板の上部を消してくれます。
その間、ひなせは両方の性を持つ者が幸福を手に入れるなら、性を持たない自分はどうなるのか考え込んでいました。


しおりはひなせがチョークの粉を被っていることを教えてくれます。
ひなせはブレザーに付いた粉を落とすのですが頭も白くなっていました。

髪の毛の粉を落とすしおりの手が急に止まってしまいます。



笑いだすひなせにしおりが小学校の時の思い出話を始めました。
2人は小学校の授業で似顔絵を描き合ったのですが、しおりは頑なにひなせの横顔を描こうとします。
結局しおりが描いたひなせの似顔絵だけが横顔で飾られました。



急に褒められたためひなせは戸惑ってしまいます。



ここでチャイムが鳴ってしまったので会話が中断しました。

そのままひなせは話の内容が分からないまま放課後を迎えます。
帰ろうとするひなせなのですが、しおりの様子がおかしいと感じていました。

帰り支度をしているとひなせとりつが担任の先生に呼び出されます。
先生の用事は大掃除の道具を運ぶことでした。


りつは一緒に運ぶと言ってくれたので2人はさっさと仕事を終わらせることにします。
仕事をしている中でひなせはりつと同じテニス部員が帰っていたことに気が付きました。


ここでりつが急に動きを止めます。

何かを言おうとするのですがりつの身体にほうきが倒れかかってきました。

助けてもらったりつは思い詰めたような顔をしながら話を続けます。


りつはひなせに想いを伝えると逃げるように立ち去ってしまいました。
その後、ひなせが教室へ戻るとしおりが待っています。
しおりは進路調査の紙を記入していました。


話の続きはモデルをしてほしいというものではありません。

しおりもひなせに告白をしてきたのです。
ですが性別が定まっていないひなせは2人の告白を理解することができません。
動揺したひなせはしおりの前から逃げ出してしまいます。

18度目の春を迎えたひなせに転機が訪れました。
この転機をきっかけにひなせは己の性別を確立させることができるのでしょうか!?
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『性別「モナリザ」の君へ。』を読んだ感想
とてもよくできたストーリーだと思いました。
性別がある年齢になるまで定まらないところや、親友だと思っていた2人から告白されるシーンなど見所が盛り沢山ですね。
哲学的な小説のようにメッセージ性が強い『性別「モナリザ」の君へ。』!
ファンタジー漫画とヒューマンドラマが融合したような物語になっています。
読み応えのある作品を探している人はこの漫画を選んでみてください。
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