宝石商リチャード氏の謎鑑定のネタバレ(漫画)!指輪の持ち主は?

今回は「漫画 あかつき三日 原作 辻村七子」先生の『宝石商リチャード氏の謎鑑定』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。

※記事の中にはネタバレ部分がありますので、お先に立ち読みをお勧めします!

 

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』はこんな漫画(あらすじ)

酔っ払いに絡まれていた宝石商のリチャードを助けた中田正義(なかたせいぎ)は、祖母が遺した指輪の鑑別をリチャードに依頼しました。

指輪のピンク・サファイアが本物ということだけでなく、リチャードは盗品であることも見抜きます。

盗品であることを知りながら鑑別した正義の目的は、持ち主にピンク・サファイアの指輪を返却することでした。

掏摸で生計を立てていたことを恥じていた祖母の報いを晴らすためにも指輪は持ち主に返さなければなりません。

すでにリチャードは持ち主を見つけていて正義を神戸まで連れて行きます。

ピンク・サファイアに宿る真実とは・・・!?

人の心に寄り添う職業をテーマにした『宝石商リチャード氏の謎鑑定』

今回は“ピンク・サファイアの正義”後編の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。

神戸でピンク・サファイアに関する真実が全て明らかになりますよ。

 

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』の魅力紹介(ネタバレ含む)

前編

指輪の元の持ち主を探していた正義に、リチャードは神戸に会わせたい人がいると言いました。

悩んだ正義は母親のひろみに電話をかけてみます。

中田正義
「俺、明日そっちに帰る予定だったけど」

母親のひろみは同僚が忌引きなので出勤することになっていました。

そのため帰ってきても不在だと言われます。

暗黒の反抗期を経た正義とひろみは戦友のような付き合い方をするようになっていました。

中田正義
「リチャードはなるべく早く連絡してほしいと言っていたけれど、ばあちゃんの過去の話題はひろみにとって地雷も同然だ、こんなことどうやって話したら・・・」

しかし今を逃がしたらもうチャンスはありません。

勇気を出してばあちゃんのことをどう思っていたか尋ねてみます。

ひろみ
「・・・どうって実の母親よ、あんたには関係ないことでしょ」

一言で質問を遮られてしまいました。

確かにこの世界には絶対に許せない人間の姿を胸に抱えた人たちがいて、母親のひろみも間違いなくその内の1人です。

ひろみは未だに自分の母親を許してはいません。

中田正義
「でも俺にとってはばあちゃんはひろみの他、たった一人の肉親で父親より長い時間を一緒に過ごしてくれた俺の本物のばあちゃんだった、それでも俺には関係ないって言うのか」

明日は帰らないと伝えたら電話を切られました。

続いてリチャードに明日ならバイトが休みだとメールを送ります。

すると明日の午前十時、東京駅八重洲改札口に指輪を持ってきてほしいと返信がありました。

リチャード
「遅い、行きましょう」

リチャードに連れられ山陽新幹線で神戸へ向かいます。

新神戸駅からはタクシーで移動することになりました。

中田正義
「・・・今更ですけど誰に会いに行くんですか」
リチャード
「会えばわかります」

タクシーが到着したのは花に囲まれた豪邸の前です。

豪邸の中で待っていたのは老婦人でした。

丁寧に挨拶するとリチャードが老婦人に正義のことを紹介します。

中田正義
「・・・はじめまして、中田正義です」
宮下さん
「リチャードさんからお電話で話を聞きました、わたくしのこと、あなたはご存じですね」

目の前の宮下さんが半世紀ほど前、ばあちゃんに指輪を盗まれ路面電車に飛び込んだご令嬢だとすぐに分かりました。

正義はリチャードからばあちゃんの話を手短に話すよう指示されます。

上手く伝えられるかは分かりませんが、どうしてばあちゃんが掏摸になったのか、どんな人だったのか、どれだけ苦しんだのかを伝えました。

優しくしてくれたばあちゃんですが正義は言い訳をするつもりはありません。

ただばあちゃんの後悔とお詫びの気持ちを宮下さんに伝えたかったのです。

中田正義
「それで偶然会ったリチャードさんに指輪を託したんです」

宮下さんは涙を流しながら正義の話を聞いてくれました。

そして当時のことをゆっくりと話してくれます。

運命が重なったのは宮下さんが20歳になった年の肌寒い四月でした。

宮下さんの父親が経営する会社が借金を重ねてしまい、敵対企業の買収を受けることになったそうです。

宮下さんは敵対企業の社長に嫁入りを命じられました。

ピンク色の宝石が装飾された婚約指輪は外国で手に入れた珍しいものでしたが、宮下さんはこれが女の一生の値段なのかと思ったそうです。

あてもなく電車を何駅か乗り過ごしているうちに、左手の指輪がないことに気が付きました。

宮下さん
「今でもあの瞬間を昨日のことのように思い出しますよ、少しも、ほんの少しも悲しくなかった、宝石に罪はないけれどわたくしにとってその指輪は鎖のついた首輪でしたから、誰かが籠の扉を開けてくれたような気がしたのです」

しかし父親にぶたれたことで自分の親不孝を悟ったそうです。

もう生きていても仕方がないと思った宮下さんは翌日、指輪をなくした駅で線路に飛び込みました。

死ねなかった宮下さんの婚約は破断し、右足が動かなくなったことで厄介者になってしまいます。

病院の狭い部屋に閉じこめられて一生過ごすことも覚悟しました。

宮下さん
「そこでお世話になった上方訛りの可愛いお医者さんがわたくしを気に入ってくださったんです、人生何が起こるかわからないでしょう?」

幸せそうな笑顔を浮かべながら話をしてくれます。

正義はばあちゃんの幸せそうな笑顔を見たことがありません。

中田正義
「ばあちゃんはこの指輪をずっと持っていることで自分を許さないって決めていたんだと思います、でも俺はばあちゃんが好きなんです、もう終わりにしてやりたいんです、お願いです、もらってくれませんか」

宮下さんが宝石にはそれぞれ宝石言葉があることを教えてくれました。

国や時代によって様々ですがダイヤモンドの宝石言葉は“永遠”、エメラルドの宝石言葉は“喜び”です。

そしてリチャードがピンク・サファイアの宝石言葉が“弱者への正義”だと語りました。

宮下さん
「あの時代あなたのおばあさまもわたくしも、わたくしの家族もあなたのお母さまもみんな弱者でした」
中田正義
「・・・でもばあちゃんのせいで」
宮下さん
「天命だったのです、恨んだことはございません、正義さんはどうか弱い人を助ける人であってください、困っていたリチャードさんを助けてあげたように、それが正しいことです」

ピンク・サファイアを見たら自分のお願いを思い出してほしいと言ってくれます。

そしてばあちゃんのご仏前にありがとうという伝言まで頂くことができました。

指輪を受け取った正義はばあちゃんのように逞しく生きていくことができるのでしょうか!?

 

 

指輪を盗まれた宮下さんの優しさに感動しました。

数奇な運命を天命だと受け入れた言葉に器の大きさを感じますね。

ピンク・サファイアが紡いだ素敵な物語を描いていく『宝石商リチャード氏の謎鑑定』

まだ正義はひろみとばあちゃんについて話し合っていません。

犯罪者だったばあちゃんをそれぞれの考え方で受け入れる親子の葛藤にご注目ください。

後編

帰りの新幹線でリチャードが豚まんを買ってくれました。

中田正義
「・・・どこまで知ってたんだ?」
リチャード
「宮下さまのご家族とは何年も前からのお付き合いです、大奥さまの数奇な人生に纏わる宝石についても伺ったことがありました、あなたの指輪を見た時まさかと思いましたが」

石の研磨や指輪を作成した年代も大奥さまの話と合致しています。

そもそもリチャードは日本にこの年代のパパラチアがある時点で間違いないと判断していました。

中田正義
「パパ・・・何?」

独特のオレンジがかったピンク色のサファイアはパパラチアと呼ばれています。

宝石に詳しくないので正義は聞いたこともありません。

パパラチアはシンハラ語で蓮の花というスリランカの言葉です。

リチャード
「私事ですが、私の祖母はスリランカのラトゥナプラという町の生まれです、1950年代の産出以来、近年までパパラチア・サファイアはこの町の鉱山以外では全くとれませんでした」
中田正義
「じゃあこの石も・・・?」
リチャード
「実に興味深いことです、スリランカでとれた石がヨーロッパで磨かれ遠く日本に流れ着くとは、日本式に言うならこれも何かの縁でしょうか」

不思議な縁を感じた正義はリチャードに交通費を支払おうとしますが受け取ってくれません。

リチャードはご贔屓にしてくれる宮下さんのために仕事をしたのです。

中田正義
「二度目の喫茶店で盗品の可能性があるって言っただろ、なんであんな遠回しなことを言ったんだ?」
リチャード
「あなたがピンク・サファイアの鑑別を依頼した本当の目的があの時はわからなかったからです」

最近は日本の宝飾品をインドや中国で転売するビジネスが人気になっていました。

しかし彼らは鑑別書のない高額な宝飾品には手を出しません。

宝飾品は文字通り玉石混交の市場なのです。

中田正義
「ばあちゃんの形見だって話はしただろ」
リチャード
「大抵の詐欺師は形見だ、家宝だと言います、そもそも実際一度は盗まれた指輪です、質に流れて無関係な他人の手に渡っていると考えるのが妥当でしょう」

正義が宮下さんと無関係なことは99%分かっていました。

そこでリチャードは遠回しな言葉で正義を試したのです。

中田正義
「やっぱ今日の切符代はありがたくいただいとくわ」
リチャード
「そのくらい可愛げのあるほうがもっと楽に生きられると思いますよ、正義の味方さん」

言いたいことを言うとリチャードは寝てしまいました。

切符代は頂くことにしましたが豚まんまで貰うわけにはいきません。

中田正義
「待てリチャード、こんなものまでもらえないよ」
リチャード
「一人で食べろとは言いません・・・一度実家へお帰りなさい、まだ話すべきことがあるはずです、多分あなたが思っているよりも多く」

言われた通り実家へ帰ることにします。

豚まんを持って帰るとひろみは喜んでくれました。

中田正義
「あのさ、ひろみこれ知ってる?」
ひろみ
「知ってたわよ、家を出る時あんたが持っていったのも、持ってればいいじゃない、別に惜しくないわよ」

ひろみは宮下さんの話を知っていながら指輪を捨てなかったそうです。

ただし犯罪者の母親を許したわけではありません。

中田正義
「どうして許してあげなかったんだ?」
ひろみ
「家族っていうのは許すとか許さないとかじゃないのよ、否応なしに血がつながってるんだから、女一人だったらあの人はよっぽど楽に暮らしていけた」
中田正義
「そんなことないだろ、ばあちゃんだって家族がいたから」
ひろみ
「わかってるわよ」

ばあちゃんは娘がいたから頑張ってこられたと正義は考えています。

長い間、2人分の生活費を稼ぐため社会的には許されないことをしてきました。

そうでもしなければ生きていけなかったことはひろみも理解しているはずです。

中田正義
「ひろみは・・・母さんはばあちゃんのこと本当に恨んでたのか?」
ひろみ
「駄目なものは駄目って話よ」
中田正義
「犯罪は犯罪ってことか」

ひろみの説明に正義は納得することができません。

娘と孫では立場が違うことを理解できていないのです。

ひろみ
「あたしだけはあの人のやったことを許しちゃいけないのよ、絶対、つらい事情があるのは世界中の誰だってみんな同じことでしょう、どんな理由があったって泥棒は犯罪なのよ」
中田正義
「それはそうだけど、でも本当に必要ならやるだろ!他に方法がなかったら・・・」
ひろみ
「じゃああんたは!他に方法がなかったら誰をいじめてもいいって言うの、電車の中で財布をとられて途方にくれてる人に小さな娘のいるシングルマザーのしたことだから許してくださいって言えるわけ」

ばあちゃんから掏摸の手口を教わったチンピラに、あんたの母親は正義の味方だと悪びれずに言われたこともありました。

掏摸の稼ぎで食ってたひろみが笑顔で有難うなんて言おうものなら被害に遭った人が浮かばれません。

罪を犯さなければ死んでいたかもしれませんが、それを完全に否定できるのはばあちゃんとその大切な娘だけなのです。

納得した正義はばあちゃんの仏壇に手を合わせました。

後日、正義がリチャードの店を訪ねます。

中田正義
「返事はわかってると思いました、今日ここに来たのは支払いがしたかったのと会ってお礼が言いたかったからです、あの指輪を手放す気はありません」
リチャード
「なるほど、こちらも予想通りです、提案があります、以前から日本でのベースキャンプになる場所が欲しいと思っていました」

お客と話をするための店を構えるので、雑用と掃除のバイトを頼まれました。

適任だと言われた正義はリチャードのお店で働くことにします。

リチャードと出会った正義は時々ピンク・サファイアの指輪を光にかざすようになりました。

中田正義
「私は悪いお手本だとばあちゃんは言ったけれど、やっぱり俺はあんな風に逞しく生きていきたい、俺はばあちゃんが好きだし一番大切な人に許されなくてもいいという覚悟は正しくなくても悲しいくらい美しいものだと思うから」

次はどんな宝石に纏わるドラマと出会うのでしょうか!?

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2024.04.07

 

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』はこんな人にオススメ

漫画を読んで感動したい人にオススメの作品です。

ピンク・サファイアの指輪が盗まれた事件には様々な人間の想いが複雑に絡み合っていて、涙が止まらなくなりました。

優しさに満ち溢れた物語で読者を魅了する『宝石商リチャード氏の謎鑑定』

謎が解明されていく中で大きな感動を味わえる物語になっています。

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