今回は「高浜寛」先生の『ニュクスの角灯』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『ニュクスの角灯』はこんな漫画(あらすじ)
明治11年、長崎県に住んでいる美世(みよ)は西南戦争で親を失いました。
生活費を稼ぐため奉公先を探し始めた美世は、鍛冶屋町に店を構える“蛮”という道具屋を訪ねることにします。
そこで彼女を待ち受けていたのは店主の小浦百年(こうらももとし)と、彼がパリ万博で仕入れてきた最先端の商品でした。
触れた物の未来と過去の持ち主が見える神通力を持つ美世は、品々に宿る様々な喧騒や思い入れを受け取っていきます。
不思議な少女と変わり者の道具屋が織り成す明治のロマンを綴っていく『ニュクスの角灯』!
今回は近代史とアンティークを題材にした人気作品の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
明治時代のハイカラな雰囲気を感じながら大注目の物語をお楽しみください。
『ニュクスの角灯』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
1944年、熊本県の防空壕に祖母と孫娘が避難しています。
祖母は空襲の爆音に怯える孫娘を抱きしめながら、もうすぐ戦争が終わることを予知しました。
予知を信じられない孫娘に祖母は世界が最も素敵だった10代の頃の話を聞かせていきます。
10代の頃、祖母は西南戦争で父親を失いました。
その結果、長崎県に引き取られた祖母は最悪の日々を過ごすことになります。
しかし奉公先を探し始めた祖母は1軒の道具屋を訪ねたことで運命が激変することになりました。
少女だった頃の美世が長崎県鍛冶屋町に店を構える”蛮”の扉を叩くのですが誰も出てきません。
一緒に来ていたお世話になっている家のおばさんが扉を叩くと、ようやく中から男性が顔を出しました。
強面な男性に売り子の応募に来たことを説明すると店内へ通してくれます。
店内で男性が美世に住所と名前、そして特技を書いて欲しいと言ってきました。
他にも帳簿、力仕事などができるか質問されるのですが美世はどれも経験したことがありません。
募集の紙にはいくつかの条件が記載されていたのですが、美世は条件を1つも満たしていなかったのです。
美世に自分の食費を稼いでもらわないと困るので、おばさんは男性にしつこく食い下がります。
諦めて帰ろうとする美世が扉を開けると甲冑を身に纏った男性が大きな物音を立てて落下してきました。
どうやら男性の言葉通り店主が帰って来たようです。
パリから商品を仕入れてきた店主は美世が募集を見て来たことを知るとすぐに面接を始めました。
辞退しようとする美世に対して、一緒に来たおばさんが彼女の特殊な能力を説明します。
美世には触れた物の過去や未来の持ち主が分かるという特殊な神通力があるのです。
それを聞いた店主は時計の未来の持ち主を見てと頼んできました。
店主の質問に美世が少し首をかしげます。
悩みながら時計をじーっと見つめても過去は見えません。
この日のうちに返事が貰えなかったことで美世は不採用だと落ち込んでしまいます。
また父親を亡くしてから精神的に不安定な美世は店内で泣いてしまいました。
すると店主が美世にお菓子を渡してきます。
チョコレートを貰った美世は包んでいる紙を丁寧に開けました。
店主はチョコレートを包むため近くに置いてあった貼り紙を使ったのです。
ですがこの貼り紙にも蒐集家が存在していました。
美世に大切なものを気づかされた店主は採用を決定してくれたのです。
そのまま店主は糸が切れたかのように眠ってしまいました。
1878年、不思議な道具屋の扉を開けたことで暗かった美世の生活は明るく素敵なものへ変化していくことになるのでした。
風変わりなのですが個性的で素敵な登場人物ばかりだと思いました。
神通力を持っている美世はもちろん、どこでも眠れる百年、そして怖そうなのですが中身は優しい岩爺の3人は全員が愛されるべきキャラクターですね。
明治時代のノスタルジックな雰囲気と、アンティーク品の古き良き味わいが感じられる『ニュクスの角灯』!
前編で登場したチョコレートだけでなく歴史を学べる様々な骨董品が登場していきます。
百年が仕入れた商品にも注目しながら続きをご覧ください。
後編
道具屋で働くことになった初日の朝、美世は世話になっているおばさんからくれぐれもクビにならないよう念を押されます。
働いてお金を稼がなければタダ飯食らいのため無職になる訳にはいきません。
しかしいざ店の前に到着すると美世は悪いイメージを抱いてしまいます。
クビになっても動揺しないように心構えをしていると、店から岩爺が顔を出しました。
岩爺に促され店内に入ります。
すると百年が美世のことを待っていました。
この日は初日のためまず百年が店についての説明を始めます。
世界の珍品を集めて売っている道具屋の“蛮”は百年が店主で、当初は岩爺に店番を任せていました。
しかし現在の岩爺は帳簿と裏方も担当しています。
裏方の担当になった理由は怖い顔の岩爺が店にいるとお客が来ないためでした。
万国博覧会は世界中の優れた発明品や美術品を展示するイベントです。
世界最先端の技術が集結した前回のパリ万博には1500万人のお客が来場しました。
このパリ万博に足を運んだ百年は売れると思った品物を大量に仕入れてきたのです。
美世に仕事をしてもらおうとするのですが、すでに岩爺が商品を陳列していました。
ですが店内は岩爺がピカピカにしています。
忙しすぎるのも辛いのですが仕事が全く無い状況も耐えられません。
やってみなければ分からないと語る百年はまず“いろはにほへと”を教えていきます。
しかし美世は気づかないのですが、百年が教えるのは仮名ではありません。
教えの通り“いろはにほへと”を書いていきます。
たどたどしいのですが美世は“いろはにほへと”を書けるようになりました。
百年が教科書として渡したのは“不思議の国のアリス”の初版本です。
本の中には美しい絵が載っていて美世はすぐ夢中になっていきました。
百年が笑いながら本を取り上げます。
しかし本を渡したくない訳ではありません。
不安を感じている美世の気持ちを百年は見抜いていたのです。
そのため店へ足を運びやすいように本をプレゼントしました。
美世は少しでも早く本の内容を理解したいため、1日で仮名を全て覚えることにします。
翌日、仮名を覚えた美世が店へやって来ました。
しかし表情が優れません。
美世の言葉を聞いた百年は大笑いしてしまいます。
百年は仮名ではなく小文字のローマ字を美世に教えていました。
海外から届く商品は送り主や商品名がローマ字で記入されています。
美世はこの荷物に書かれたローマ字を読んで岩爺に伝える仕事を与えられました。
これも美世を辞めさせないようにする百年の計画だったのです。
百年の思惑通り辞めることなど考えなくなった美世は、海外から届く多くのアンティーク品に囲まれていくのでした。
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『ニュクスの角灯』を読んだ感想
肩身の狭い思いをしている美世のことを気にかけた百年の優しさに感動しました。
この2人を陰で支える岩爺がお茶を出したりするシーンにも優しさを感じられますね。
世界中のアンティーク品にまつわる人間模様を描写していく『ニュクスの角灯』!
ユーモアを交えながら道具屋に届けられる骨董品の裏側に潜む人間ドラマをお届けしてくれます。
各界から称賛されている注目作品を是非この機会に読んでおいてください。
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