今回は「竹屋まり子」先生の『あくたの死に際』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『あくたの死に際』はこんな漫画(あらすじ)
一流企業に勤めている31歳の黒田マコトは上司や部下に頼られていて、彼女とも良好な関係を築いています。
順調な人生を歩んでいるつもりの黒田でしたが、急に会社へ行く道が分からなくなってしまいました。
小さな積み重ねによって心を病んでいた黒田は、この日から会社を休職することになります。
早期の復職を望んでいるのに身体を思うように動かせない黒田は、道端で学生時代に所属していた文芸部の後輩で、現在は人気小説家の黄泉野季郎(よみのきろう)と再会しました。
ここから才能がないと思い込み小説家を諦めた黒田の人生がリスタートしていくのです。
つまらないものとして扱われた主人公が苦難の道を突き進んでいく『あくたの死に際』
今回は小説家を題材にしたヒューマンドラマの魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
絶望と希望の間でがむしゃらに夢を追いかける黒田の姿からロマンを感じ取ってください。
『あくたの死に際』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
学生の頃、文芸部に所属していた黒田マコトは後輩に自分の書いた小説が載った部誌を見せたことがありました。
後輩から文芸賞を期待できると言われましたが、黒田は自分に小説家の才能があるとは思っていません。
そんな黒田は就職先に大企業を選びました。
31歳になった黒田は入社から9年間、順調な会社員生活を過ごしています。
後輩から頼られた仕事も残業しながらこなす日々を送っていました。
しかし最近は頭痛に悩まされるようになっていて、市販の頭痛薬を服用するようになっています。
いつものように通勤電車に乗っていると、彼女のミライから土曜日に行われる友人の結婚式の後、家に行きたいとメールが送られてきました。
結婚式の二次会は子持ちの友人が多いため、後日の昼間に行われるそうです。
黒田は結婚や子供というワードを見ているうちに、自分たちもそろそろ結婚する時期かもしれないと思ってきました。
電車内で激しい頭痛に見舞われます。
頭痛に苦しみながら車内を見上げると、人気小説家の黄泉野季郎が出版した最新刊の中吊り広告が目に留まりました。
いつも乗っている通勤電車を降りて会社に向かっているはずなのに、同じ道を何回も通ってしまいます。
この日はミーティングがあるので早く会社に行かなければいけません。
急いでいるはずなのに黒田は9年も通っている会社に行く道が分からなくなってしまいました。
出社できなくなったのでとりあえず会社に休職届を提出します。
会社側は優秀な社員の黒田が一日も早く復帰してくれることを願っていると言ってくれました。
彼女のミライもまた会社に行けるまで一緒に頑張ろうと励ましてくれます。
自分がどうしてこのような状況に追い込まれたのか理解できません。
しかし暗闇にいる人間は、自分が暗闇にいることに気付かないものなのです。
医者からは疲労がたまっているかもしれないので休養を勧められました。
薬も出してもらいましたが症状は一向に改善しません。
このままではお先が真っ暗な気がしてきます。
それでも自分の体を思うように動かすことができません。
頭を抱えていると懐かしい声が聞こえてきました。
暗闇の中で苦しんでいた黒田には、後輩の黄泉野が光っているように見えます。
久しぶりに再会した黄泉野は黒田の闇を払拭する輝きとなってくれるのでしょうか!?
ストレスが多い現代社会人の悩みをリアルに表現した物語になっていますね。
黒田のように仕事が順調でも小さなストレスの積み重ねが心を病んでしまうことに共感しました。
心に蓋をしていた青年が再び夢を追い始める『あくたの死に際』
黄泉野と再会したことによって黒田が正直な気持ちを少しずつ打ち明けていきます。
闇の中で光を見つけた黒田の葛藤は誰もが感情移入できるはずですよ。
後編
黄泉野と再会した黒田は道端で意識を失ってしまいました。
夢の中で黒田は文芸部だった頃、黄泉野に小説の執筆を軽い気持ちで勧めたことを思い出します。
当時の夢を見ていた黒田がパソコンのキーボードを叩く音で目を覚ましました。
水を飲みながら部屋の中を見回します。
机には黄泉野が執筆した小説が置いてありました。
自由業なので曜日の感覚がない黄泉野は、今日が平日だということに気付いていません。
サボりだと聞かれた黒田はメンタルを病んで休職中だと伝えます。
いきなり事情を打ち明けたので黄泉野を困らせたかもしれません。
9年ぶりに会ったほとんど他人な後輩に愚痴をこぼしてしまいます。
早く復帰しなければいけないと焦っているため愚痴が止まらないのかもしれません。
黒田は自律神経を整えるセロトニンを活性化させるため、散歩をしながら日光を浴びるようにしていました。
副交感神経を活発にすることがメンタルの安定につながるのです。
黄泉野のように成功を収めた人間には社会の歯車が理解できないのかもしれません。
黒田が帰ろうとすると黄泉野が本棚から人間失格を取り出しました。
文芸部時代に黄泉野が書いた小説に驚かされたのは否定できません。
ただ嫉妬したことは認めたくないのです。
ここで黄泉野がいきなりキスをしてきました。
黄泉野は黒田に才能がないとは思っていません。
良識を捨てて自分自身を出せばすごい作品が書けることを知っています。
自信満々の黄泉野は受賞を確信しているのかもしれません。
黒田は確かに黄泉野なら受賞できる気がしてきました。
話を逸らしたい黒田なのですが黄泉野は諦めてくれません。
それぐらい黄泉野は黒田の才能を認めているのです。
ようやく黒田の本音が出てきました。
殺したいと言われた黄泉野は笑ってしまいます。
逃げ出すように黒田が黄泉野の部屋を出て行きました。
しかし階段の前で足が止まってしまいます。
想像の中で握った鉛筆が光のように感じられました。
光と闇の間で迷っていると黄泉野が外に出てきます。
帰宅した黒田はネットで大島出版社の新人文芸大賞を調べてみました。
黒田は黄泉野に言われた通り小説を執筆するのでしょうか!?
『あくたの死に際』を読んだ感想
いつの間にか溜めてしまっていたストレスによって仕事ができなくなった黒田の姿に、現代社会が抱える恐ろしさを感じました。
才能がないと決めつけて夢を諦めた黒田にぶつけられた黄泉野の真っ直ぐなセリフには感動しましたよ。
小説家の才能がせめぎ合っていく『あくたの死に際』
胸が熱くなるヒューマンドラマになっています。
他人の目を気にせずに夢を追いかける情熱を表現した素晴らしい物語ですよ。
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