今回は「会田薫」先生の『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』はこんな漫画(あらすじ)
江戸時代、耕書堂は浮世絵や絵本などの出版と販売を生業としていました。
耕書堂は歌麿や写楽などの有名な絵師を輩出したのですが、版元である蔦屋重三郎が鬼籍に入ったことで勢いを失っていきます。
その中で二代目を引き継いだ蔦屋重三郎が吉原で絵の上手な娘と出会いました。
娘が写楽の血を引いていることを知った重三郎は、たまきという少女を引き取ることにします。
たまきの才能を利用して耕書堂の発展を目指す重三郎と、何も知らずに江戸の浮世絵界の門戸を叩くことになった少女の運命を描いていく『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』!
今回は複雑な事情が絡み合っていく歴史時代劇の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
現代では考えられない時代を生き抜いた絵師たちの物語を目の当たりにしてください。
『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
吉原の遊郭に身を預けているたまきが絵を描いています。
するとお客として来ていた二代目蔦屋重三郎が絵の上手さに注目してくれました。
絵の上手さだけでなく父親が絵師だと知ったことで蔦屋重三郎が一層関心を示してきます。
興味が湧いた蔦屋重三郎はたまきの父親である絵師について尋ねてみることにしました。
たまきの言葉を聞いた蔦屋重三郎は絶句してしまいます。
それでもすぐ我に返った蔦屋重三郎はたまきを自分の所でお世話することにしました。
写楽の娘であるたまきはこうして吉原を出ることになったのです。
ここから5年の歳月が過ぎました。
成長したたまきが外で絵を描いていると、ご婦人から似顔絵を描いて欲しいとお願いされます。
上手な似顔絵を描くたまきにはこのようなお願い事が殺到していました。
紙が無くなるまで似顔絵を描いていると摺師の由太郎が声をかけてきます。
吉原ではなく酉の市に行ったことを証明するため熊手を見せてきました。
しかし10歳まで吉原で生活していたたまきは吉原の匂いを忘れていません。
敏感な嗅覚で由太郎が吉原に行っていたことを見抜いたのです。
2人が他愛もない話をしていた頃、耕書堂では絵師が蔦屋重三郎に枕絵を出版しようと提案していました。
枕絵とは春画や艶本といわれるもので、当時の庶民たちは枕絵を娯楽にしていて、一流の絵師は枕絵に力を入れていたのです。
当時は禁令を恐れたため枕絵の衰退が続いていたのですが、歌川派のトップである豊国という絵師が巻き返しを図ったこともあり、人々は枕絵の再興を期待していました。
そのこともあり耕書堂に所属する絵師たちは枕絵を描くことを望んでいたのです。
要望を聞いていた蔦屋重三郎は何も言わずたまきのことを迎えに出かけました。
由太郎と話していたたまきを蔦屋重三郎が屋敷へ連れ帰ります。
この日の夜、たまきは蔦屋重三郎から帳面を渡されました。
帳面を渡されても描くものが見つかっていません。
すると蔦屋重三郎が意外なことを言い出しました。
意味が分からないたまきが慌てて飛び起きます。
その様子を見ていた蔦屋重三郎が窓を開けました。
窓の外では男女が激しく性行為を行っています。
蔦屋重三郎はその様子をたまきに春画として描かせることにしました。
たまきは必死になって男女の様子を春画として完成させます。
しかし蔦屋重三郎からつまらないと言われてしまいました。
たまきの絵がつまらない理由を男性経験が無いためだと説明します。
その上で5年間、好きなように絵を描かせていた恩返しを求めてきました。
蔦屋重三郎は春画を完成させるため由太郎に抱かれることを命じてきたのです。
右も左も分からないたまきには育ての親から言われたことを断る理由がありません。
春画を完成させるためたまきは由太郎に抱かれてしまうのでしょうか!?
男性経験が無いため思ったような春画を完成できなかったたまきに対して、由太郎に抱かれてくることを申し出た蔦屋重三郎の姿に驚いてしまいました。
現代の日本ではあり得ない設定だからこそ読み応えがある作品に仕上がっていますね。
立派な絵師として成り上がるためなりふり構わない少女の姿を描いていく『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』!
時代考証がしっかりとしている歴史時代劇です。
もしも自分がたまきと同じ立場だったらどのような心境になるのか考えながら読んでみてください。
後編
由太郎に抱かれて来いと言われたたまきは、吉原から引き取られた頃を思い返していました。
当時のたまきは吉原に帰りたくて仕方なかったのですが周囲から引き留められてしまいます。
駄々をこねるたまきに対して蔦屋重三郎は説得するように金平糖を与えました。
たまきが過去を思い返していた頃、由太郎は雨が降ってきたため自宅へ戻ることにします。
自宅へ戻った由太郎はめくり餅を作ることにしました。
めくり餅というのは由太郎の父親が得意にしていた料理で、水に浸した奉書紙を潰してから葛と味噌を合わせて団子にします。
そして団子を味噌汁に入れればめくり餅が出来上がることを由太郎は父親から教わりました。
父親はめくり餅を食べていれば悪病にかからないと言っていたのですが、数年前に病を患ってしまい他界しています。
決して裕福ではありませんでしたが、父親が摺師だったため由太郎は紙に困ったことはありません。
そんなことを思い出しながらめくり餅を食べていると玄関を叩く音が聞こえてきます。
もちろん由太郎はたまきが抱かれに来ていることなど知る由もありません。
そのためたまきにめくり餅をご馳走することにします。
たまきは自分の食べているものが紙だとは思えません。
そんなたまきに由太郎が訪ねてきた理由を質問します。
この質問に対してたまきは顔を真っ赤にしながら答えました。
思いもよらぬ答えに由太郎はめくり餅を吹き出してしまいます。
蔦屋重三郎から命令されていることを知らない由太郎はたまきの真意が理解できません。
恥ずかしさに耐えながら抱いて欲しいと求めます。
しかし由太郎が行動を起こしてくれないので他の男性に抱かれてくると言い出しました。
蔦屋重三郎から経験を積む必要があると言われたことを正直に話します。
身寄りがない状態で吉原を出たたまきには戻れる場所がありません。
そのため蔦屋重三郎はたまきにとって最も重要な存在なのです。
由太郎は男女の身体がどのように違っているか詳しく教えながらたまきを抱きました。
肌の厚みや温もり、毛の硬さなどの違いを知ったたまきはすぐに春画の制作に取り掛かります。
しかし重要な部分を思い出すことができません。
由太郎に抱かれたはずなのですが、たまきの頭に浮かぶ顔は蔦屋重三郎だったのです。
それでも一心不乱になって春画を完成させました。
春画を完成させ力尽きたように寝ていると蔦屋重三郎がやって来ます。
たまきが完成させた春画は人間の本質を見事に描ききっていました。
その完成度は天才絵師の葛飾北斎に迫るほどです。
蔦屋重三郎はたまきの春画を使って江戸の人々をどのように魅了していくのでしょうか!?
『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』はこんな人にオススメ
歴史時代劇とヒューマンドラマが好きな人にオススメしたい作品です。
江戸時代の出版業界と美術業界で巻き起こる壮絶な人間ドラマを描いていますよ。
なりふり構わず美術の発展を目指す者たちの情熱を表現した『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』!
現代社会ではあり得ない時代背景をじっくりとお楽しみください。
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