今回は「江口夏実」先生の『出禁のモグラ』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『出禁のモグラ』はこんな漫画(あらすじ)
文芸学科に通っている大学生の真木と八重子は、男性の頭部に空から降ってきた広辞苑が直撃する現場に遭遇してしまいます。
幸いなことに男性は無事だったのですが、挙動不審なので怪しい人物と疑ってしまいました。
大丈夫だと言われるのですが放っておいて男性が死んでしまえば20代にして大きなトラウマを背負うことになります。
心配になった真木と八重子に男性が自分は百暗桃弓木(もぐらももゆき)という仙人だと正体を明かしてくれました。
気付かぬうちに真木と八重子はモグラと関わったことで心霊現象が見えるようになってしまっていたのです。
マイペースな仙人と大学生の交流を描写した『出禁のモグラ』
今回はシュールな笑いをお届けしてくれるギャグコメ漫画の第3話と第4話についてネタバレを含みながら面白さをご紹介していきます。
モグラがあの世から出禁をくらっている理由にご注目ください。
『出禁のモグラ』の魅力紹介(ネタバレ含む)
第3話
古来、桃の木でできた弓は厄を払うと言われています。
そのため大晦日に疫鬼や疫神を払う儀式で使われてきました。
モグラのフルネームを知った真木は不吉だと感じてしまいます。
ここでモグラがカンテラに灯を入れました。
ぶっ飛ばした幽霊から灯を貰ったそうです。
しかしこの幽霊は悪霊ではありません。
ただ八重子のことを眺めていただけなのだそうです。
それでも八重子は気味が悪くなりました。
心霊現象を体験した真木と八重子はモグラに説明を求めます。
良い判断をした2人にモグラは自宅で話をすることにしました。
まずモグラは普通の人が思い浮かべる幽霊の絵を描きます。
幽霊の横には鬼火と言われる火の玉を描きました。
鬼火は死んだ人が出すあの世への道標と言われています。
お盆に鬼灯の実を飾るのは亡者が持つ灯りを意味していました。
幽霊は魂の中に灯を持っていて、自然とあの世へ導かれるようになっています。
ただし個人差があるので迷っている幽霊も少なくありません。
鬼火とは魂から漏れ出ているカス火です。
真木と八重子の頭にカウンセリングという言葉が思い浮かびますが、モグラに最後まで話を聞けと注意されました。
モグラが持っているカンテラには幽霊が出しているカス火を貯められるので、多くのカス火を貯めてあの世へ導く灯にする予定なのです。
黙って話を聞いている真木と八重子はちんぷんかんぷんになってきました。
真木と八重子がモグラと出会ったのは、彼の頭に広辞苑が直撃した時です。
心配した2人が救急車を呼ぶとモグラは命の灯を飲みました。
文系のオタクは理解が早くて助かります。
ただし命の灯をチャージすると怪我が治るだけではありません。
ですがモグラは若返ることを望んでいません。
モグラはあの世に逝けませんが普通に生きてはいるので、病気になるし怪我もするしお腹も減ります。
そのため定期的に灯で体を調整しなければ生活ができません。
生活するためにはお金がかかるので働く必要があります。
我慢をすれば貯金はできますが健康を保つことができません。
灯を使えばお金はかかりませんが灯の貯蓄が減ってしまいます。
モグラが暮らしている場所は抽斗通りと名付けられていました。
その名の通りモグラのような存在をしまっている場所なのです。
道がなかった訳ではありません。
ただ見てなかっただけなのです。
人間は自分が見たいものしか見えません。
探し物がずっと探していた所から出てくることが良い例えです。
聞きたい事はたくさんありますが多すぎて1つに絞ることができません。
荒唐無稽すぎるのですが真木はモグラの話を本当だと仮定することにします。
壊れたTVを拾って直した時、数日後に受信料の請求が来た時も怖い思いをしました。
モグラが言いたいのは何をするにもお金が必要だという事です。
灯を貯めたいしお金も貯めたいし、あの世へ逝くためには健康的に生活をしなければなりません。
全てが中途半端の状態でモグラは生活していました。
やることは多いのですができないことも多すぎるのです。
あくまでもデータなので改竄すれば取得は不可能ではありません。
必要としている者もいるので商売にしている存在もいるそうです。
文系オタクの真木は1942年に心当たりがありました。
一体モグラの元に何が届けられたのでしょうか!?
鬼火から漏れ出ているカス火が栄養源というモグラの生態に驚きました。
モグラと関わったことによって意識していなかった幽霊が見えるようになったことには説得力がありますね。
あの世へ逝けず仙人として彷徨う苦悩を表現した『出禁のモグラ』
出禁をくらっているためモグラは様々なことを経験してきました。
その過去に八重子が意外な関りを持っていますよ。
第4話
1942年、モグラに届けられたのは臨時召集令状でした。
臨時召集令状が届いたのは、モグラが一般人としての身分を大金で買った矢先のことです。
当時のモグラは徴兵検査で合格した自分が認められたような気がして喜んでいました。
しかし現地への出兵をリアルに考えると我に返ったのです。
徴兵検査に合格しているのでモグラには出兵を断る理由が分かりません。
モグラは灯で健康を保っていたので断ることは難しかったそうです。
昨日の真木が着ていた服には1911と書かれていました。
この数字は拳銃を意味しています。
モグラは服装から真木がライフルや拳銃に詳しいことを見抜いていました。
真木の趣味を否定したいわけではありません。
実際に歩兵銃を使ったことはありますが、モグラは良く知らないだけです。
ゲームや映画の中ではライフルや拳銃はカッコイイものかもしれません。
しかし戦場では別物でした。
痛みや臭いが今でも忘れられない中、一番きつかったのは大勢の亡霊が見えることだったそうです。
戦場がトラウマになったモグラは今でも住民票を買う気にはなれません。
何より貯めた灯を戦場で全て使ったので一から出直しになってしまいました。
モグラはカンテラにこつこつと灯を貯めている最中です。
ですが人手が足りないので真木と八重子に複雑な事情を説明しました。
親切な真木と八重子についつい色々と話してしまったそうです。
もしも連絡して来なくても怒るつもりはありません。
レバーを貰ったお礼を言うと2人を帰しました。
もぐら湯を出た2人はまだ全てを信じられていません。
戦場に行った曾おじいちゃんの写真にモグラと似ている兵隊が写っていたことを思い出しました。
白黒の写真が珍しいので印象に残っていたそうです。
曾おじいちゃんはお酒の代わりに戦闘機のガソリンを飲んだなど、とんでもない話を色々と聞かせてくれました。
モグラの話を聞いた真木は、戦場で幽霊がたくさん見えたのならカス火を使う量よりも多く貯められたと考えています。
もしかするとモグラは灯を自分に使うよりも他人に使っていたのかもしれません。
少しだけモグラのことを理解できた真木と八重子だったのです。
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『出禁のモグラ』はこんな人にオススメ
ギャグコメ漫画とヒューマンドラマが好きな人にオススメの作品です。
3人のコミカルなやり取りと、カス火を貯めなければいけないのに使わざるを得ないモグラの悲哀を丁寧に表現していますよ。
登場人物の優しさに包まれている『出禁のモグラ』
突拍子もない話に耳を傾ける真木と八重子の姿に胸を打たれました。
曾おじいちゃんとモグラが同じ戦場にいたというシーンも感動的ですね。
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