今回は「カレー沢薫」先生の『ひとりでしにたい』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『ひとりでしにたい』はこんな漫画(あらすじ)
35歳の山口鳴海(やまぐちなるみ)は都内の美術館で学芸員をしています。
婚活とアイドルの追っかけに夢中だった鳴海なのですが、憧れていた伯母が孤独死したことによって生き方を見つめ直すことにしました。
しかし35歳の鳴海には婚活の需要が全くありません。
そこで鳴海は婚活から終活へシフトすることを決意しました。
誰にも迷惑をかけず一人で死んでいきたいという鳴海の願いは叶うのでしょうか!?
死と向き合うヒロインの姿から人生にとって何が大切なのかを問いかける『ひとりでしにたい』!
今回はユーモアを交えながらヒューマンライフを描いていくコメディ漫画の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
既婚者も独身者もこの漫画を読んで人生の終わり方を考えるきっかけにしてみてください。
『ひとりでしにたい』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
山口鳴海には憧れている伯母がいます。
父親の姉に当たる伯母はキャリアウーマンで、オシャレな格好と素敵な香りを漂わせていて、子供の頃から鳴海は伯母のようになりたいと思っていました。
しかし35歳となった鳴海に両親から伯母の訃報が伝えられます。
孤独死というワードを聞いた鳴海は部屋の中で伯母が腐乱している姿を思い浮かべました。
ですが伯母の遺体はもっと悲惨な状態だったのです。
伯母が亡くなった場所はお湯を保温する浴槽だったため、遺体は人間の形状を留めていませんでした。
父親はその状態を遺体ではなく汁だったと語ります。
汁のような状態の伯母が住んでいた部屋の清掃と遺品整理に父親は高額な料金を請求されてしまいました。
そのこともあり結婚をせず出産もしなかった伯母に罰が当たったと思っています。
女性を蔑視するような発言が許せません。
さらにお葬式の日程を知らせずに済ませていたことが鳴海を苛立たせました。
しかし両親が鳴海に伯母の死を伝えなかったことには鳴海にも責任があったのです。
カッコ良かった伯母が変わってしまったことで、鳴海は伯母と距離を取るようになっていました。
伯母の死に目に立ち会えなかったことを後悔した鳴海は、伯母の遺品を引き取ることにします。
両親から強引に伯母の遺品を譲り受けた鳴海は自宅マンションへ帰ることにしました。
遺品の中にはバッグや食器がありましたが、さすがに亡くなった人の私物を使う気にはなれません。
そのまま遺品を整理していると見慣れないアイテムが出てきました。
鳴海はこのアイテムが何なのか分からないため、翌日になると職場に持って行って同僚に聞いてみることにします。
すると同僚から謎のアイテムが女性用のオナニーグッズだと教えられました。
大人になったら伯母のようになりたいと思っていた気持ちを捨てることにします。
伯母のようになりたくないと決めた鳴海は婚活を始めることにしました。
同僚からは変な男性に注意しなさいと言われたのですが、鳴海はすぐにマッチングアプリへ登録することにします。
自分でも変な男性が寄ってきたら困ると感じていました。
しかし実際は変な男性どころか鳴海に会いたいという男性は1人も現れません。
自分の職業が婚活のネックになっているのか考えてしまいます。
ここから鳴海はある人物の指摘によって婚活を考え直すことになりました。
35歳の鳴海はここから先の人生をどのように見つめ直すのでしょうか!?
人間は誰もが思ったような終活を送ることができないかもしれません。
そのことを伯母の孤独死で実感した鳴海の姿が印象的でした。
結婚しない男女が増えている昨今の日本を上手に表現している漫画になっていますね。
人生の終わり方と向き合うヒロインの日常をコミカルに綴っていく『ひとりでしにたい』!
年齢に関係なく自分の最期について向き合うきっかけにしてもらいたい物語です。
人生がハッピーエンドになるための大切なことをこの作品から学んでみてください。
後編
マッチングアプリの婚活が上手くいかないことに悩んでいる鳴海が自宅に戻ってきました。
先日、マンションを購入した鳴海は念願だった猫を飼い始めていたのです。
本当は保護猫を引き取りたかったのですが、独身で一人暮らしという環境がNGとなってしまいました。
一人暮らしの人間に保護猫を預けることは推奨されていません。
そのため仕方なくペットショップで猫を探すことになったのです。
しかしこの状況にも悩みがない訳ではありません。
鳴海が死んでしまうと猫の餌がいつかは底をついてしまいます。
そうなるとこの部屋に残された食べ物は鳴海の遺体しかありません。
もしも孤独死してしまうとお腹を空かせた飼い猫が自分の遺体を食べてしまうかもしれないのです。
飼い猫のためにも婚活を成功させなければなりません。
しかしマッチングアプリの男性からは連絡がこない状況が続いていました。
翌日、仕事中も婚活のことを考えているといつの間にか他の社員が帰ってしまっています。
那須田は去年の春に新卒で官庁から出向してきました。
予算を担当している那須田はエリートのため先輩の鳴海より給料が高いかもしれません。
鳴海は那須田とほとんど話したことがないため声をかけることはしませんでした。
同僚との会話を聞かれてしまっていたようです。
話を聞いた那須田は1つの疑問を抱いていました。
自分の心境を那須田に話す義理はありません。
そのため適当に答えると別の質問が返ってきました。
婚活アプリに登録している30代の男性は20代の女性を狙っていると指摘します。
40代の男性も20代を狙っているため35歳の鳴海には需要がありません。
もしも鳴海に連絡が来るとしたら50代の男性か、親の介護などで緊急に人手が必要な男性だけなのです。
那須田の指摘はまだまだ終わりません。
親の介護を手伝った場合、介護が終わっても旦那の介護が続いていき、最後には自分に介護が必要になるという堂々巡りになってしまうのです。
そもそも平均寿命は女性の方が長いので最後は結局一人になってしまうという現実も指摘されました。
昨今の若者は自分の生活を支えるだけで精一杯のため親の面倒を見る余裕などありません。
また子どもがしっかり自立してくれるかも分からないのです。
最近では定職に就けない子どもと親の共倒れが問題となっていました。
過酷な現実を指摘した那須田は言いたいことを伝えると帰ってしまいます。
那須田の指摘によって鳴海は一人で生きて一人で死んでいくことを決意しました。
しかし那須田の目的は鳴海に結婚を諦めさせることではありません。
厳しい指摘で現実を突き付けた理由は自分に対して鳴海に興味を持ってもらいたかったからなのです。
那須田の指摘は年下男性のメリットにつながっていたのですが鳴海には伝わりませんでした。
一人で死んでいくことを決意した鳴海のことを那須田は振り向かせることができるのでしょうか!?
『ひとりでしにたい』を読んだ感想
女性だからという理由だけで周囲から結婚して出産することを求められる現状は不平等ですね。
理不尽な現状を理解した鳴海が一人で死にたいと思う気持ちに共感することができました。
新たな視点で終活と向き合っていく『ひとりでしにたい』!
人によって満足できる最期の迎え方はそれぞれ違うと思います。
そのことを理解しながら鳴海の決断を見守ってみてください。
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