今回は「梶本レイカ」先生の『悪魔を憐れむ歌』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『悪魔を憐れむ歌』はこんな漫画(あらすじ)
北海道で被害者が四肢を逆方向に折られて亡くなるという連続殺人事件が発生します。
遺体が箱のように折られていたことから“箱折連続殺人”と名付けられたこの事件を道警が必死に捜査するのですが、8年が経過しても犯人は見つかっていませんでした。
そして現在、この事件を捜査しているのは阿久津という刑事だけになっていたのです。
周囲が呆れる中、事件を追っている阿久津が咽喉科専門の四鐘という医師と出会いました。
捜査に協力してくれることになった四鐘だったのですが、彼こそ箱折連続殺人の真犯人だったのです。
事件を追う刑事と殺人犯の運命が交錯する様子を描いた『悪魔を憐れむ歌』！
今回は血と暴力が入り混じる本格派サスペンス漫画について、ネタバレを含みながら魅力をご紹介していきます。
バイオレンスでドラマチックな物語に魅了されてみてください。
『悪魔を憐れむ歌』の魅力紹介（ネタバレ含む）
前編
8年前、警邏中の警察官から箱折死体を発見したという連絡が阿久津の元に入りました。
現場に急行した阿久津はビルの屋上で四肢を逆方向に折られた遺体を目撃します。
この異質な遺体の発見は北海道警察にとって2例目となる事態でした。
阿久津はこうして箱折連続殺人の捜査に関わることになったのです。
しかし8年が経過した現在、この事件の捜査をしているのは阿久津だけとなっていました。
捜査一課に所属する他の刑事は別の捜査で忙しいため、いつの間にか阿久津が箱折連続殺人の専従者にされていたのです。
ですが阿久津はこの状況を全く苦にしていません。
それどころか箱折連続殺人の捜査に生きがいを感じているようでした。
単独で事件を捜査している阿久津はこの日、鑑識のベテラン刑事に意見を聞きに行くことにします。
ここで2人が事件を改めて振り返り始めました。
まず殺された被害者2人は骨折の形状が一致したため、同一犯ということが確実視されています。
その中で1件目の被害者はホームレスという身元が断定されましたが、2件目の遺体は未だに身元が判明していません。
阿久津が以前からこの損傷にこだわっていることを知っていたベテラン刑事は、彼に咽喉分野の専門医を紹介してくれました。
病院の中に通された阿久津に専門医が笑顔で自己紹介をします。
四鐘がクォーターだと知った阿久津は早速事件の資料を見せることにしました。
ニュースで名前は聞いたことがあると言う四鐘に、首の損傷が気になっている遺体の写真を見せます。
自分の判断が正しいことに満足げな表情を浮かべる阿久津に対して、四鐘が急に耳を触診してきました。
これが箱折事件を追う刑事と真犯人の出会いだったのです。
当然ですがこの時点では阿久津が四鐘を犯人だと疑う材料はありません。
果たしてここから2人の運命はどのように交錯していくのでしょうか！？
連続事件を捜査する刑事の執念が感じられますね。
そのため本格派サスペンスでありながら骨太な作品に仕上がっていると思いました。
事件を捜査することで人生を狂わされた刑事と、猟奇的で残酷な殺人犯の姿を描いていく『悪魔を憐れむ歌』！
サスペンス漫画ファンにオススメしたい魅力的なストーリーになっています。
それでは少しずつ解明されていく事件の真相に注目しながら続きをご覧ください。
後編
四鐘の元から警察署に戻った阿久津は、捜査一課が追っているレイプ犯のことを気にかけていました。
そのため誰もいない一課に行き、捜査ファイルを盗み見ることにします。
するとファイルの中には一課がスパイとして捜査に協力させている橋田という人物がピックアップされていました。
このことを阿久津が同期の刑事に問い詰めると、スパイの犯行を未然に防げなかった上層部の指示により、橋田の逮捕にストップがかかっていることが判明します。
やり切れない思いを抱く阿久津は、単独で橋だと接触することにしました。
橋田と面識がある阿久津は、彼に会うとすぐにレイプ事件について切り出します。
阿久津の言う通り、現在も2人の様子を捜査一課の刑事が尾行していました。
しかし橋田は阿久津の助けを求めてはいなかったのです。
それどころか今でも箱折連続殺人の捜査をしていることを馬鹿にしてきました。
箱折連続殺人事件が幻であるかのように語る橋田に、怒りが抑えられない阿久津が殴りかかってしまいます。
何とかこの場は捜査一課の刑事が割って入ったため事なきを得ました。
ですが実はこの橋田の行動は全て道警の上層部によって仕組まれた罠だったのです。
上層部はある秘密のため阿久津を道警から追い出そうと考えていました。
そのためわざと橋田の情報を掴ませ、阿久津に彼と接触する機会を持たせたのです。
現職の警察官として橋田から被害届を出されてしまうと、阿久津は言い訳することすらできません。
一方の橋田は上層部に協力することで捜査の対象から外してもらうことができました。
すると彼は再び刃物で脅しながら女性をレイプしていきます。
皮肉なことに上層部と結託した橋田は、調子に乗って女性を刃物で刺してしまいました。
しかしここで凶行を繰り返す橋田の背後に不気味な人物が姿を見せます。
橋田の背後に現れた四鐘は、まるでオペラの舞台で踊っているかのような行動を取り始めました。
刃物を持って襲い掛かる橋田を闘牛士のようにヒラヒラと避ける四鐘。
そのまま彼は橋田の四肢を逆方向に折り、絶命させてしまいました。
こうして再び箱折連続殺人の被害者が出てしまいます。
数日後、四鐘が再び犯行を重ねたことを知らない阿久津が彼の病院を訪ねてきました。
白々しい態度で四鐘が阿久津と接していきます。
四鐘はあくまでも事件の協力者を装っていました。
喉の調子が悪かった阿久津だったのですが、四鐘の治療によって回復したようです。
自分の声帯を初めて見た阿久津には、少しグロテスクなものに見えていました。
しかし四鐘は女王の気管と呼ばれる声帯の美しさを崇拝していたのです。
そんな彼は阿久津の声帯が何よりも気に入ってしまったようでした。
阿久津が帰ると自宅で彼の声帯を眺め始めます。
こうして四鐘のターゲットにされることになった阿久津。
刑事と快楽殺人鬼はここからどのような物語を繰り広げていくのでしょうか！？
予測不能なストーリーがどのように展開していくかは、実際に漫画をご覧になってお確かめください。
『悪魔を憐れむ歌』を読んだ感想
サスペンス漫画として完成度の高い作品だと思いました。
孤独な刑事とサイコパスを中心に据えながら、警察組織の内部に蔓延する軋轢も上手に織り交ぜています。
まるで本格派のサスペンス小説を読んでいるような満足感が味わえる『悪魔を憐れむ歌』！
サスペンスとミステリー漫画ファン全てに読んでもらいたい傑作です。
スリリングな物語に熱中してみてください。
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