今回は「三田紀房」先生の『アルキメデスの大戦』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『アルキメデスの大戦』はこんな漫画(あらすじ)
1933年、大日本帝国海軍の中枢では次世代の主力旗艦を決定するための会議が繰り返されていました。
その中で海軍少将の山本五十六は大型戦艦よりも航空母艦と空母を守る高速の護衛艦が必要だと訴えます。
しかし海軍内で権力を握る海軍技術研究所は超大型の戦艦を建造する計画を打ち出してきました。
海軍技術研究所は巨大戦艦を大和と名付け、格安な建造費で計画を進めようとしてきます。
この計画と安すぎる建造費に疑問を抱いた山本五十六は、謎を解明するため帝大数学科に通う天才を招聘することにしました。
天才数学者の櫂直(かいただし)を頼ることにした山本五十六だったのですが、日本の現状に辟易した櫂は依頼を引き受けてくれません。
後に海軍大将まで登り詰めた山本五十六は天才数学者である櫂を説得することができるのでしょうか！？
戦艦大和の建造を阻止するために動き出した男たちの物語を実話に基づきながら描いていく『アルキメデスの大戦』！
今回は日本の未来を変えようとした軍人たちを描写したヒューマンドラマの魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
『アルキメデスの大戦』の魅力紹介（ネタバレ含む）
前編
昭和8年、太平洋上で大日本帝国海軍の第一航空戦隊が洋上演習を行っています。
演習に参加しているのは航空母艦の赤城で、海軍少将の山本五十六が指揮を執っていました。
赤城から次々と航空機が飛び立つ様子を山本五十六が部下達と見つめています。
この日の演習は大成功で世界に大日本帝国の名を知らしめる日が近いことを予感させました。
しかし山本五十六は最新の大型戦艦が計画されていることを危惧しています。
これから先の時代には航空戦力の充実が必要だと考えている山本五十六。
大型戦艦を建造する費用があるなら空母と航空兵力を重点的に建造するべきだと考えています。
昭和8年の大日本帝国は激動する時代の中で大きく揺れ動いていました。
まず4年前に起こった世界恐慌によって国力が大打撃を受けてしまいます。
この疲弊した国力を回復するため大日本帝国は中国大陸進出を目論みました。
そして3年後、関東軍が中国の一部地域を占領し満州国樹立を宣言します。
しかし中国大陸進出を果たした結果、中国市場を狙う欧米との対立化が深刻化してしまいました。
お互いに経済的利害を対立させた大日本帝国と欧米は軍事面でも対立していくようになっていきます。
その中で海軍の軍事力増強は必須の課題となっていました。
当時の世界は日米英仏伊の五大海軍国が軍艦の削減を目的とした軍縮条約を結んでいたため、海軍力は均衡を保っていたのですが軍縮条約の有効期限が2年後に迫っていたのです。
有効期限を迎えると欧米各国は強大な新型の戦艦を建造することが目に見えていました。
一方で大日本帝国の海軍は軍艦の老朽化が深刻な課題となっていたのです。
そこで浮かび上がってきたのが純国産で最新の大型戦艦を建造する計画でした。
しかし当時の海軍少将だった山本五十六は、これからの時代に必要なのは航空機攻撃が重要だと考えていたのです。
山本五十六は自分の理想を海軍設計主任に打ち明けました。
設計主任も山本五十六の意見に賛同してくれます。
ですが新型戦艦建造計画会議で航空機攻撃を主流とする計画を採用されるためには、彼らの意見と相反する計画を打ち負かさなければいけません。
山本五十六の計画に対抗するのは超巨大戦艦の採用を求める海軍技術研究所です。
設計主任のプレゼンテーションに全てを託した山本五十六。
こうして日本の未来を託された新型戦艦建造計画会議が行われることになりました。
果たして大日本帝国海軍の旗艦を決めるこの会議ではどのような結論が出されるのでしょうか！？
山本五十六という戦時中の偉人を中心にした歴史物語に仕上がっていますね。
戦艦大和が必要だったのかを検証するような要素も歴史好きにはたまらないと思いました。
この漫画を読めば戦争に関わった人たちの苦悩と葛藤が理解できる『アルキメデスの大戦』！
戦争をテーマにした超大作になっています。
平和な時代だからこそ知っておきたい歴史を学んでみてください。
後編
山本五十六から設計の採用を託された設計主任が新型戦艦建造計画会議に参加することになりました。
まず高速護衛艦の模型を選考委員たちに披露します。
しかし航空機からの爆撃を想定した護衛艦の理念は選考委員に受け入れてもらえません。
選考委員たちは航空機からの爆撃では護衛艦が沈まないと信じているようです。
一方、山本五十六の計画に対抗する海軍技術研究所は大型の模型で選考委員の注目を集めました。
ここから双方の意見がぶつかり合い議論は紛糾していきます。
設計主任は航空機が戦争の主流になると主張するのですが、海軍技術研究所は海戦の主役はあくまでも艦隊だと主張しました。
するとここで選考委員の1人が別の問題に着目します。
実は設計主任の案に比べ海軍技術研究所の案は遥かに建造費が安くなっていました。
両者の建造費を比較すると倍以上の開きがあります。
これにはカラクリがあり、海軍技術研究所は誤魔化した建造費を会議に提出していました。
設計主任が安すぎる建造費に疑問を投げかけるのですが、相手側が建造費の誤魔化しを認める訳がありません。
ここで会議は終了の時間を迎えてしまい、結論は2週間後に持ち越しとなりました。
後日、設計主任から会議の顛末について報告を受けた山本五十六は、海軍技術研究所の案を潰す秘策を思いつきます。
海軍技術研究所の平山が提出した見積金額は数字を捏造したとしか思えません。
この捏造を暴くことができれば平山案の設計自体がいい加減であることを証明できると考えたのです。
山本五十六はそのことを後ろ盾となってくれている司令長官の永野に進言しました。
いい加減な案を提出したことが証明できれば、平山を含む海軍技術研究所が決定会議を侮辱したという名目で反撃できるのです。
しかし官僚などを使って見積金額の計算をやり直そうとすると、海軍技術研究所側に嗅ぎつけられるかもしれません。
もしもこちら側の動きを悟られると相手側が妨害してくる可能性も考えられます。
そのため内密に行動を開始することにしました。
ですが永野や設計主任には計算ができる人物の心当たりがありません。
ここで山本五十六がある人物のことを思い出します。
山本五十六が学生のことを思い出していると、女将がやって来て芸妓が挨拶に来られないことを詫びてきました。
芸妓たちは1人のお客が独占しているそうなのです。
そのお客について質問すると帝大数学科の学生だということでした。
まさかと思った山本五十六は学生の部屋へ案内してもらいます。
山本五十六が探していた人物が偶然にも同じ店へ来ていました。
すぐに見積金額の計算について話そうとするのですが櫂直の表情が曇っていきます。
突然押しかけた無礼を詫びる山本五十六の話を櫂直は仕方なく聞いてみることにしました。
しかし軍人が嫌いだという櫂直はこの頼みを断ってしまいます。
実は翌日から櫂直はアメリカへ留学することが決まっていました。
翌日、櫂直は予定通りアメリカ行きの船へ乗り込もうとするのですが、そこで飢えた子どもを見かけます。
貧しい人々を放っておいて権力争いと利権獲得だけを狙っている軍人への怒りが込み上げてきた櫂直。
考え直した櫂直は軍部の暴走を止めることを決意しました。
天才数学者として彼は戦艦大和の建造を食い止めることができるのでしょうか！？
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『アルキメデスの大戦』を読んだ感想
歴史が好きな人はもちろん、シリアスなヒューマンドラマが好きな人を満足させる内容に仕上がっていますね。
戦争が人間の精神を破滅させていく様子や、軍部の暴走も見事に描かれていると思いました。
戦艦大和が建造される裏側に迫っていく『アルキメデスの大戦』！
骨太な物語と実話に基づいたストーリーが見所となっています。
近代史の闇に飲まれてはいけない真実を目に焼きつけてください。
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