『東独にいた』のネタバレ(漫画)!国家が隠す陰謀の結末は?

今回は「宮下暁」先生の『東独にいた』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。

※記事の中にはネタバレ部分がありますので、お先に立ち読みをお勧めします!

 

『東独にいた』はこんな漫画(あらすじ)

1985年の東ドイツ、ベルリンの壁で真っ二つに引き裂かれた社会主義国家にアナベルという女性が暮らしていました。

読書が好きなアナベルは古本屋を営んでいる日系人のユキロウという青年に恋をしています。

しかし密かな恋心と共にアナベルは国家が隠す陰謀に絡んだ秘密を抱えていました。

秘密を明かせないことで苦悩するアナベルだったのですが、ユキロウもまた大きな秘密を抱えていたのです。

国家の陰謀が絡む秘密に翻弄される2人の運命とは・・・!?

時代に阻まれてしまった男女のロマンスを描いていく『東独にいた』

今回は東ドイツを舞台にした歴史時代劇の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。

イデオロギーの戦いに巻き込まれた切ない男女の物語を目に焼き付けてください。

 

『東独にいた』の魅力紹介(ネタバレ含む)

前編

身だしなみを整えたアナベルが小さな本屋に入っていきます。

ユキロウ
「いらっしゃいませ・・・って、何だ君か」
アナベル
「何だって何よ、数少ない客に向かって」
ユキロウ
「悪いけれど新しい本は入ってないよ、これならあまってるから1マルクでいいよ」

店主のユキロウから安い本を勧められるのですが断りました。

この日のアナベルは本を買いに来た訳ではありません。

アナベル
「ユキロウ、この間のベルリン国際映画祭で金熊賞とったやつあるでしょ?チケットが2枚あるから今度観にいかない?」

頬を真っ赤に染めながらユキロウを映画に誘いました。

突然のお誘いだったためかユキロウはすぐに返事をしてくれません。

ユキロウ
「もちろん」

少しだけ沈黙したのですが笑顔でOKしてくれました。

映画に行く約束をしたアナベルは大喜びで本屋を後にします。

アナベル
「彼はユキロウという名の日系人で小さな本屋を営んでいる、私は彼と会う時、着痩せする服を選び苦手なハイヒールを履いてオフィスレディを気取る」

文学青年の雰囲気を漂わせるユキロウに対して粗野な振る舞いを見せたくありません。

そのため着替えてから本屋を訪れるアナベルは自分が軍人であることをユキロウに伝えられていないのです。

1985年、アナベルが生まれたこの時代は東西冷戦の真っ只中で、世界は社会主義と資本主義の両陣営に分かれていました。

ベルリンの壁が分断した東ドイツは社会主義を貫き、対照的に西ドイツは資本主義を掲げています。

イデオロギーの戦いは激しさを増していて、オリンピックなどの国際大会ではその傾向が顕著になっていました。

この時代、社会主義国家のソ連と東ドイツのメダル獲得数は他国を寄せ付けない華々しい結果を残していたのです。

ただし社会主義を掲げた東ドイツの国民に自由が約束された訳ではありません。

アナベル
「秘密警察・・・目つきでわかるわよ」

ナチス政権時代よりも国民への監視が厳しくなっていたのです。

さらに国家に流通する物資は政府が計画した生産物でした。

そのため国民は貴重な物資を手に入れるため、行列を作って店に並ぶことも珍しくありません。

しかし店頭に並ぶ食材は小ぶりでみすぼらしいものばかりでした。

アナベル
「徹底した監視と統制、この国は監獄だと誰かが言った」

ソーセージがご馳走になった監獄のような国の中でアナベルは生活しているのです。

本屋を出て軍服に着替えたアナベルが仲間と共に任務へ向かいました。

この日の任務は民主化運動に併せて活発化している反政府組織から政治家の身辺警護をすることです。

しかし社会主義党の政治家から必要ないと言われてしまいました。

どうやら軍人が身辺警護をすることは政治家の人気に悪影響を及ぼすと考えているようです。

政治家は身辺警護よりも反政府組織の元締めである“フレンダー”と呼ばれる男の確保を命じてきました。

見知らぬ人という意味のフレンダーさえ確保できれば民主化運動に終止符を打てると言うのです。

結局この日は身辺警護を了承してもらえませんでした。

帰り道、仲間がアナベルに政治家のレベルが国家のレベルを表すと苛立ちながら説明してきます。

勝手なことばかり言う政治家を相手にしたため堪忍袋の緒が切れそうになっていました。

アナベル
「確かに・・・支配政党やその言いなりの私達軍人は澱んでいるのかもしれない、だからといってこの国のすべてが悪いわけじゃない、それを忘れちゃ駄目」

苛立つ仲間が言う通りこの国は上から下まで澱んでいるのかもしれません。

それでもアナベルは国を見捨てず任務を遂行するつもりなのです。

彼女が国家を愛そうとする理由とは・・・!?

 

 

日本で暮らしている人には理解できない状況を表現した作品だと思います。

監視と統制で国民を支配しようとする社会主義の恐ろしさに背筋が凍るような恐怖感を覚えました。

社会主義国家の中で運命を交錯させる男女を描写した『東独にいた』

冷戦時代の東ドイツに焦点を当てた多くのことを学べる歴史時代劇になっています。

イデオロギーが異なるだけで人間の生活が激変する様子をご覧ください。

後編

政治家から身辺警護を断られたアナベルは、帰り道にユキロウの本屋へ立ち寄ることにします。

本屋でジャムを食べていると日本語で書かれた本を見つけました。

アナベル
「ユキロウは日本へ行ったことあるの?」
ユキロウ
「あるよー、一度だけ、同じ敗戦国なのに東ドイツとのあまりの差に驚いたよ、あの国はとても豊かだ」

ユキロウが見た日本のお店には1から作った新品が並んでいました。

対照的に東ドイツの店に並んでいるジャムの瓶は再利用で白く摩耗しています。

アナベル
「ユキロウはそーゆーの羨ましい?」
ユキロウ
「まぁねぇ、でも僕はこの国のほうが好きだな、質素倹約な社会だけど僕はここにいる人達が好きなんだ」

アナベルはユキロウが自分と同じような考え方だったことを嬉しく思っていました。

一方その頃、アナベルたちからの身辺警護を拒否した政治家が何者かの襲撃を受けています。

襲撃の知らせはすぐにアナベルの元へ伝えられました。

アナベル
「ごめん、呼び出しだから行ってくる、私のジャム食べちゃ駄目よっ」

アナベルと仲間が現場に到着すると警察官から状況が報告されます。

政治家は評議会から党本部へ移動中に拉致され雑居ビルへ連れ込まれました。

犯行グループは反政府組織のフライハイトで、彼らの目的は政府要人への見せしめなのだそうです。

状況を確認したアナベルたちはすぐにビルの中へ入っていきました。

そしてあっという間に反政府組織の人間たちを制圧していきます。

実はアナベルや仲間たちは普通の軍人ではありません。

彼らは多目的戦闘群(通称MSG)と呼ばれる超人部隊なのです。

前述した通り東ドイツは1970年代から1985年まで、ソ連に次ぐ第2位のメダル獲得数を誇っていました。

世界第2位という輝かしい成績は人口比から考えると明らかに異常な数字です。

その裏にあるものは国家主導のもとに行われている身体改造でした。

特にMSG隊員は生物学に基づき身体を改造された超人たちなのです。

MSGは最少の戦闘単位で敵の要衝を叩くという理想を実現させました。

まさに共産圏の闇ともいえるMSGは神軀兵器と呼ばれ恐れられているのです。

神と呼ばれる能力で隣のビルから現場へ突入したアナベルは、あっという間に反政府組織の人間を惨殺しました。

そして表情を変えずに現場を立ち去ると、ユキロウが待っている本屋へ戻っていきます。

アナベル
「それ私のジャムでしょ」
ユキロウ
「あ、食べる?」
アナベル
「いらないよ」

アナベルはユキロウが運転するトラバントで送ってもらうことにしました。

運転しながらユキロウは何も喋らないアナベルの様子が気にかかります。

ユキロウ
「さてはだいぶ飲んでるだろ、君は全く顔に出ないから気付きにくいけど」
アナベル
「飲まなきゃやってられないこともあるのよ」
ユキロウ
「飲まなきゃやってられないことなんてないよ、下戸でも頑張っている人は沢山いる」
アナベル
「正論だけど正解じゃない、今のは僕でよければ話を聞くよと答えるところよ」

苛立ったアナベルは助手席のドアを蹴破ってしまいました。

ドアを破壊されたままユキロウは運転を続けます。

ユキロウ
「着いたよ、アナ?」
アナベル
「ユキロウ、私軍人なの、本当はね普段香水もつけないし口紅だって塗らない、本当はね何人も殺してる、御国のためとはいえ自分のやっていることは間違っているかもしれないと何度も思った、でも今さら引き返せないことの1つや2つ・・・誰にだってあるでしょ?」

何人も殺してきたため引き返すことなどできません。

そんな自分を肯定するためアナベルは国家を愛そうと決めました。

ユキロウが殺人を前提にした軍人が嫌いなことは分かっています。

それでも胸の内を聞いてほしくなっていました。

ユキロウ
「君は間違っていない」

一言だけ伝えたユキロウが帰っていきます。

アナベル
「たったそれだけの言葉を私はどれだけ探していたのだろう」

ユキロウの言葉によってアナベルの涙が止まりません。

ようやく秘密を打ち明けられたのですが、ユキロウも大きな秘密を抱えていました。

実はユキロウこそが反政府組織の元締めである“フレンダー”なのです。

表では互いを理解しながら裏では対立するアナベルとユキロウの運命とは・・・!?

 

『東独にいた』はこんな人にオススメ

哲学的な歴史時代劇を探している人にオススメの漫画になっています。

それぞれの主義主張に従って生きる登場人物たちを見ているうちに胸が熱くなってくるはずですよ。

社会主義と資本主義の間で翻弄された人間の運命をテーマにした『東独にいた』

もしもこの時代に生まれたなら自分に何が出来たのか考えさせられるストーリーになっています。

歴史の中に入り込みながら作品の世界観を堪能してみてください。

 

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