今回は「鎌谷悠希」先生の『しまなみ誰そ彼』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『しまなみ誰そ彼』はこんな漫画(あらすじ)
周囲になかなか理解してもらえない性癖を抱えるたすくは、秘密をクラスメイトに知られたかもしれないと焦っていました。
このままでは生きていけないと感じたたすくは自殺することを考えるようになります。
しかし自殺しようとした彼の前に謎めいた女性が現れました。
“誰かさん”と呼ばれる不思議な女性はたすくを談話室と呼ばれる建物へ誘います。
談話室に集まる人たちの交流を描きながら性的少数者の苦悩を表現していく『しまなみ誰そ彼』！
今回は尾道を舞台にしたヒューマンドラマの魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
複雑な性的嗜好と向き合うシリアスな物語をじっくりとお楽しみください。
『しまなみ誰そ彼』の魅力紹介（ネタバレ含む）
前編
夏休みに入る2日前、たすくは同級生からホモ動画を視聴したか尋ねられました。
この質問を受けた瞬間、たすくは自分が死んだ気になってしまいます。
知られてはいけない秘密がバレたと感じたたすくは学校から帰る途中、石段の上から飛び降りようとしていました。
しかし光輝く何かを見かけたため飛び降りることができません。
光の方角を見てみると女性が窓から身を投げました。
慌てて女性が飛び降りた方向へ向かいます。
すると談話室という看板がある一軒家に辿り着きました。
恐る恐る中へ入ってみると2人の男女が出掛ける準備をしています。
女性が飛び降りたことを説明しようとするのですが男女は話をあまり聞いていません。
たすくに“誰かさん”という人物が散歩していることを伝えると、男女はそのまま出掛けていきました。
男女が出掛けると入れ替わるように先ほど飛び降りた女性が談話室に姿を現します。
誰かさんと呼ばれている女性はすぐに談話室を出て行きました。
談話室にいた老人から誰かさんが談話室のオーナーであることを聞いたたすくは彼女の後を追いかけることにします。
こちらを振り向かないまま誰かさんはどんどん石段を登っていきます。
その後ろ姿を眺めながらたすくは学校で起こった出来事を思い返しました。
ホモ動画を視聴していたことがバレたたすくは同級生からホモだと疑われてしまいます。
疑いをかけられたたすくは動画は兄が送ってきたものだと嘘をつきました。
ですが見た目が男性らしくないたすくの疑いは晴れません。
どうしても疑いを晴らしたいため、たすくは性的少数者を馬鹿にするような発言をしてしまいます。
自分が言われて最も傷つく言葉を使ったことを後悔しているのですが、誰かさんは何も答えてくれません。
そのまま2人は展望台まで歩き続けました。
歩き慣れていないたすくは展望台に到着するとすっかり息が上がってしまいます。
誰かさんは自分の分だけアイスを買うと展望台の中へ入っていきました。
仕方なくたすくもついていくことにします。
誰かさんは笑顔を浮かべながらアイスを食べ始めました。
たすくは彼女に不思議なオーラを感じたため、自分の悩みを打ち明けることにします。
偶然であった誰かさんはたすくの悩みを解消してくれるのでしょうか！？
まだまだ日本では性的少数者に対する理解が進んでいません。
そのためたすくのように苦しむ人が数多く存在していると思います。
マイノリティを蔑視するのではなく個性だと理解できる世の中になってほしいと感じさせる内容にも感動しました。
世界には異なるアイデンティティーが無数に存在していることを教えてくれる『しまなみ誰そ彼』！
大切なことを考えるきっかけを与えてくれる素敵な物語になっています。
登場人物の悩みに理解を示しながら続きをご覧になってください。
後編
アイスを食べている誰かさんにたすくは悩みを話し始めました。
ホモを気持ち悪いと言ってまで秘密を守ろうとしたのですが、本当に秘密が守られたかどうかは分かりません。
しかし秘密がバレた後の高校生活は地獄だということをたすくは理解しています。
そのため地獄が始まるか現状の生活が持続するかについて、大きな不安を抱えていました。
差別されてしまうかもしれない地獄に耐えられる気がしません。
ここでようやく悩みを聞いてくれていた誰かさんが言葉を発します。
アイスの当たり棒をたすくに渡すと誰かさんは展望台から飛び降りていきました。
その姿は光り輝いているように見えます。
尾道の光景に溶け込むような誰かさんの姿を黙って見つめるたすくは、不思議と気分が晴れていきました。
あまりにも不思議な体験をしたたすくは夢を見ているような感覚に陥ります。
呆然としていると売店のお婆さんが当たり棒の代わりにアイスを渡してくれました。
たすくは誰かさんの言葉を思い出しながらアイスを食べることにします。
明日また談話室を訪れればと言ってくれた誰かさんなのですが、悩みを抱えるたすくにとって何度もこの場所を訪れることは簡単なことではありません。
アイスと一緒に自分の悩みも飲み込んでいきます。
たすくはアイスを食べているうちにどんなに悩んでも明日が来ることを理解しました。
このままでは何も変わらないと思ったたすくは談話室の面々に秘密を打ち明けることにします。
すると談話室の面々には自分と同じような性的少数者がいて、たすくの想いを受け止めてくれました。
しかし悩みを打ち明けただけでは日常生活が変わる訳ではありません。
あくまでも自分の悩みを受け入れてくれたのは談話室の人間だけなのです。
マジョリティばかりの学校ではまだまだ自分の悩みを受け入れてはくれません。
談話室の面々と会話することで少しだけ悩みを解消できたたすくは、学校にも自分の居場所を見出そうとします。
そんな中、談話室のメンバー間にも新たな問題が生じ始めました。
生きることと性に関して悩むたすくたちは様々な問題を解決することができるのでしょうか！？
『しまなみ誰そ彼』はこんな人にオススメ
シリアスなヒューマンドラマを探している人にオススメしたい作品になっていますよ。
性的少数者を支援したり理解しようとする動きは少しずつですが増えていると思います。
しかしまだまだマジョリティを受け入れる体制は構築されていません。
そのためこの物語の登場人物たちのように肩身が狭い思いをしている人が多い気がします。
ですが彼らは異常な性的嗜好を持っている訳ではありません。
ただ大多数の人とは違う性的嗜好を持っているだけなのです。
多数派が少数派を差別することが大きな間違いであることを伝えている『しまなみ誰そ彼』！
もしかしたら気づかないうちに自分も多数派の側に身を置いているかもしません。
そんな事実に少しでも危険を感じた人はこの漫画を読んでみてください。
自分の立場を見直すきっかけになるはずです。
マイノリティーでもマジョリティーでも同じ人間の個性だと気づかせてくれる漫画は残念ながらなかなかお目にかかることができません。
独特な世界観の漫画を楽しみながら性的嗜好について色々と考えてみてください。
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