今回は「原作 詩石灯 漫画 新井隆広」先生の『テノゲカ』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。
『テノゲカ』はこんな漫画(あらすじ)
手は人体の中で最も複雑な機能と構造を有する特別な器官です。
そのため疾患も複雑なため専門的に治療する手外科が誕生しました。
ある日、手塚一心(てづかいっしん)が勤務する王嵐堂大学病院に交通事故で右腕が切断された60代男性が搬送されてきます。
指や腕が切断された場合、手術による再接着が可能なのは切断から血行再開までの時間は6時間しかありません。
凄腕の手外科医である手塚一心は困難な手術を無事に成功させられるのでしょうか!?
手の専門医にスポットを当てていく『テノゲカ』!
今回は感動できる医療漫画の魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。
天才的な技術で患者を救う医師の活躍を目に焼き付けてください。
『テノゲカ』の魅力紹介(ネタバレ含む)
前編
王嵐堂大学病院救命救急センターに60代男性が搬送されてきました。
男性は事故によって右前腕を切断していて、事故発生時刻は11時30分頃です。
現在は13時40分なのでまだ間に合うと判断した医師が手塚一心に連絡しました。
病院に到着した手塚は手術着に着替えながら患者についての説明を受けます。
患者は65歳の堂本信一さんで交通事故発生から3時間が経過していました。
指や腕が切断された場合、手術により再接着が可能なのは切断から血行再開までの6時間以内とされています。
ゴールデンタイムは残り3時間ですが、すでにシャントチューブによる応急処置で血行再開は完了していました。
説明を受けた手塚が手術室に入ります。
腱の縫合が完了すると動脈2本を吻合させるため顕微鏡を準備してもらいました。
切断された指や腕の再接着に行われるマイクロサージャリーでは、血管や神経などの繊細な器官の吻合や縫合が必要となります。
微小外科医が使用する縫合針は肉眼で視認することはできません。
わずか2,5ミリ~5ミリの長さしかない縫合針を用いる精緻を極めた手術は顕微鏡が無ければ行えないのです。
その精緻を極めた手術を手塚は正確な針さばきと驚異的なスピードで進めていました。
人間の身体は筋肉の収縮と弛緩によって手や脚などが震えてしまうものです。
震えのことを振戦と呼ぶのですが、手塚は自らの肉体を制御して振戦を最小限に抑えていました。
今回の手術で最も難易度が高い神経縫合が始まります。
普通の医師なら2時間はかかる動脈2本と神経1本の縫合を手塚はわずか1時間で終わらせました。
助手を務める医師は手塚の神経を見分ける速さが信じられません。
運動神経や感覚神経は繋ぎ間違えると上肢の機能が回復しなくなります。
それなのに手塚は驚異的なスピードで神経を見分けているのです。
8時間に及ぶ大手術でしたが、手塚のペースは終始変わりませんでした。
まだ若い手塚の技術に助手の医師はただただ驚かされるばかりです。
あまりにも高度な技術を見せつけられた医師は、手塚がマイクロサージャリーの化身に見えてきました。
そんな手塚が家族待合に向かいます。
まずは手術の成功と容体が安定していることを伝えました。
ひとまず強介も安心してくれたようです。
年齢の影響を避けることはできません。
また右腕が受けた損傷もかなり大きいので元通りに動く確率は50%程度です。
説明を受けている強介の腕が震えてきました。
お客様は堂本信一の仕事に惚れ込んでくれています。
強介は跡を継ぐため3年前に銀行を辞めました。
しかしまだ修業中なので父親のように寿司を握ることはできません。
また寿司を握り続け研鑽を積んできた父親の右腕は人生そのものです。
その右腕が失われることなど考えたくありません。
堂本信一の右腕は元通りになるのでしょうか!?
マイクロサージャリーという微小外科手術を丁寧に紹介しているので勉強になりました。
丁寧な説明のおかげで手塚一心の凄さが分かりやすかったです。
天才的な技術で患者の人生を救っていく『テノゲカ』!
手塚が堂本親子の絆を繋いでいく感動的なエピソードです。
すれ違う親子の感情に寄り添う医師のカッコ良さも表現されていますよ。
後編
堂本信一の手術が終わった翌日、3人の医師が院長に不服を申し立てました。
手塚がこの病院に来てから難しい手術は全て彼が担当しています。
そのため他の医師は自分たちの存在価値が無いと主張しました。
院長は適材適所で患者にとって最善を尽くしているだけです。
しかし他の医師はこのままだといつまで経っても場数を踏むことができません。
チャンスが欲しいと懇願する医師たちに院長が手塚の経歴を説明します。
手塚一心は18歳で単身フランスの大学に渡り医学を学び、アフリカや中東などの戦場で何千何百という傷病兵の命を救ってきました。
電力が不安定でまともな冷暖房も医療機器も揃っていない過酷な状況で、手塚は次々と運ばれてくる患者の治療を行ってきたのです。
医師としてのチャンスを手塚は誰かから与えられた訳ではありません。
自ら運命を切り開く勇気と情熱によってチャンスを手に入れたのです。
院長は不満を訴える医師たちに手塚のような覚悟を持つべきだと主張しました。
戦場を経験していない医師たちは何も反論できません。
堂本信一はお礼を言いたいのですがまだ痛みが残っているので体を起こすことができません。
手塚はそのままの状態で手術の説明を行います。
集中治療室で様子を見ることになった堂本信一は、身体を休めながら己の人生を振り返ることにしました。
寿司職人として仕事に没頭してきたので、家族を大切にしてこなかったと強介に思われているかもしれません。
しかし現在は強介が寿司屋を継いでくれる予定なので、自分が入院していても店を開けるように指示しました。
強介は父親の体調を心配して休店することを提案するのですが聞き入れてもらえません。
親子の関係が悪化する中、1週間が経過しました。
この病院には優秀な作業療法士が大勢いるのでリハビリをお勧めします。
ですが堂本信一が気になっているのは右腕の機能が元通りになることではありません。
16歳で板前の世界に入って半世紀が経ったので、堂本信一は寿司職人としての人生に未練は無いそうです。
ただ家庭のことを疎かにしていたので息子の強介に反発されました。
銀行に就職した強介は実家に寄りつかなくなってしまいます。
その強介が両親の守ってきた寿司屋を潰したくないと奥さんを連れて戻ってきてくれました。
堂本信一は寿司屋を息子に譲ったつもりなので、あとは本人が頑張ればいいと思っています。
初めての孫を両手で抱いて亡くなってしまった妻の墓前に見せてあげたいと願っていました。
そのためにも少しでも重いものを持てるように右腕が回復して欲しいのです。
数日後、右腕が回復した堂本信一が退院することになりました。
しかしその場に手塚の姿はありません。
手塚は師長に怒られることを覚悟しながら馴染みのお寺で漬物を食べていました。
再び走り始めた患者の未来が幸せであることを青空の下で願う手塚だったのです。
『テノゲカ』を読んだ感想
右腕の回復を願う父親と息子のすれ違いに気付いた手塚の姿に感動しました。
仕事一筋だった父親が孫を抱きたいという願いを知った息子の泣き顔も印象的ですね。
優れた技術だけでなく人の心に寄り添う天才外科医の活躍に涙がこぼれてくる『テノゲカ』!
こういう医師と出会いたいと思わせてくれました。
感動的な医療漫画を読みたい人にオススメの作品になっていますよ。
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