『大人の問題提起シリーズ さけび』のネタバレ(漫画)！

今回は「ももち麗子」先生の『大人の問題提起シリーズ さけび』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。

『大人の問題提起シリーズ さけび』はこんな漫画(あらすじ)

27歳の山口さつきは大手OA機器メーカーのコールセンターで派遣社員として働いています。

仕事は多忙なのですが充実しながら毎日を過ごしていました。

しかし上司の堂林という妻子持ちの男性から告白されたことによって、さつきの毎日は地獄のような状況に変貌してしまいます。

セクハラを受ける女性の悲痛を描いていく『大人の問題提起シリーズ さけび』！

今回は実話に基づいたヒューマンドラマの魅力について、ネタバレを含みながらご紹介していきます。

まだセクハラが社会問題になっていなかった時代に孤独な戦いに挑んだ女性の姿に注目してみてください。

『大人の問題提起シリーズ さけび』の魅力紹介（ネタバレ含む）

前編

さつきが給湯室にいると背後から物音が聞こえてきます。

「まただ・・・最近物陰からじっと誰かに見つめられているような強い視線を感じることがある、気のせいだと思いたいけれど」

このような視線を感じるようになったのは、さつきがコールセンターに勤務してから3年が経過した時のことでした。

さつきは通常業務に加えて半年前から新人研修のインストラクターも兼務しています。

忙しい毎日を送っているのですが、同期入社の親友と一緒に頑張っていました。

この日、さつきが親友とお昼ご飯を食べていると上司の堂林が声をかけてきます。

「どう？最近は何か困ったことないか？どんな事でも遠慮なくオレに相談しろよ」

堂林はサービスフロントの課長を任されていて、さつきたちをインストラクターに推薦してくれました。

「どんな些細な事でも相談にのってくれる頼れる上司」

さつきは頼りにしている堂林に人員の補充を相談することにします。

「人員を増やすかぁ・・・」

「はい・・・最近教えていても皆さん疲れているようで集中力が低下してます、他のブースからも不満の声が聞こえてきますし」

派遣社員であることを自覚しているのですが、人員を増やして欲しいと提案しました。

「いや・・・確かにオレも気になっててさ、部長には言ってるんだけど・・・」

部長は堂林の意見に耳を傾けていないようです。

「私やっぱり直接部長に言ってみようかな・・・実は今日仕事あがったら部長に鰻行こうって誘われてるんです」

サービスフロントの部長は女好きで、よく女性社員を鰻屋に誘うことで知られていました。

「他の社員は？山口一人でか？」

「はい・・・」

「そうか・・・じゃ、今夜何かあったらすぐ連絡しろよ」

こうしてさつきは部長に直談判することにしたのです。

しかし部長は彼氏のことや結婚のことを質問してくるばかりで、人事のことを申し出るタイミングがありません。

さらにいつも穿いているタイトスカートをイヤラシイ目で見てきます。

「部長、毎日そんなとこまで見てるんだ」

結局この日は人員を増やして欲しいとお願いすることはできませんでした。

当時の日本社会は仕事終わりに上司から誘われる女性社員が多く、飲み会も断れない雰囲気があったのです。

この日のさつきは二軒目の誘いを断れたのですが、酒の席で酷いセクハラを受けて泣き寝入りする女性が多くなっていました。

しかしさつきが苦しめられることになるのは部長からのセクハラではなかったのです。

「よっ、山口、昨日どうだった？鰻うまかったか？」

「もー緊張してて味はよくわからなかったです、それに結局人事の相談できな・・・」

「酔った部長に何かされなかったか？」

「あーハイー、特には・・・」

部長のセクハラ発言は日常茶飯事となっているため、さつきはあまり気にしていません。

「そうか・・・よかった、じゃ今度また部長に誘われたらオッケーする前にまずオレに言えよな」

肩を掴んで優しい言葉をかけてくれました。

堂林が自分のことを心配してくれていると思うさつき。

ですがここから少しずつ堂林は本性を現していくいくことになるのでした。

現在では考えられませんが物語の舞台となっている2005年はセクハラが日常茶飯事だったのですね。

そんな社会でセクハラと真っ向から立ち向かうヒロインが素敵だと思いました。

泣き寝入りすることのない強い女性像を表現していく『大人の問題提起シリーズ さけび』！

ここから優しかった堂林のセクハラがスタートしていきます。

下心を全開にする彼の最低な部分に驚いてみてください。

後編

心配してくれていた堂林の様子が変わり始めたのはサービスフロントの飲み会が行われた時のことでした。

「遅くなっちゃった、わぁみんなもう集まってる、えっ、ウソ、空いてる席あそこだけ！？部長の隣だけは嫌だーっ」

遅れてしまったさつきが宴会場を見てみると、部長の隣しか空いていません。

「山口こっちこっち、ここおいで！」

困っていると堂林が自分の隣へさつきを呼んでくれました。

喜んで堂林の横に座ると元気がない理由を聞かれます。

「まあやっぱり・・・人事のこと言えないままっていうのがモヤモヤしてて」

「本当にそれだけか？お前さぁ本当に部長と何もなかったのか？店出た後・・・」

「えー、堂林さんこの前からそればっかり・・・」

少ししつこいと感じながら笑顔で対応していました。

すると堂林が急に机を叩きだします。

「部長と実は何かあったんじゃないか！？山口オレは・・・お前のことが気になって仕方がないんだ」

堂林には妻子がいるためさつきには言葉の意味が理解できません。

しかし堂林は見たことも無いような真剣な表情をしています。

そのまま飲み会は終わったのですが、さつきが同僚と帰ろうとしていると堂林がタクシーに乗り込んできました。

「堂林さんちって逆方向ですよね？」

「送らせてよ・・・」

堂林はそのまま車内でさつきの手を握ってきます。

あまりにも突然の出来事が起こったため、さつきは声を出すことができません。

手を握られたことで全身の力が抜ける感覚を味わっていきます。

「酔ってるんですかっ・・・」

「酔ってなんかいないさ」

笑顔を向けながら手を離さない堂林のことを恐ろしく思えてきました。

「お先に失礼しします」

恐怖のあまりさつきが逃げるようにタクシーを降りていきます。

翌日、怯えながら出社すると堂林がいつものように声をかけてきました。

「よっ、山口おはよう、昨日はお疲れさんっ、専務からの差し入れだってーっ」

笑顔で差し入れの饅頭を渡そうとしてきます。

「なんで？あんなことしておいてなんでフツーにしていられるの！？それとも昨日は酔っていただけなの？」

さつきは堂林のことを上司として誰よりも信頼していました。

しかしあくまでも仕事上の付き合いなので恋愛感情を抱くことはありません。

また堂林もこれまでそんな態度を見せたことはありませんでした。

そのためさつきは大きなショックを受けてしまっていたのです。

さつきが給湯室へ逃げ込むと堂林が追いかけてきました。

「さっきの温泉饅頭食べた？オレの分もあげるよ、お前の好物だもんな」

「あ・・・りがとうございます・・・」

昨日のことは無かったことだと思いながら普通に接しようとします。

「いいよなぁ温泉て、浴衣着てさぁ、上げ膳据え膳でさぁ」

「・・・そうですよね・・・」

ここで堂林がとんでもないことを言い出しました。

「なぁオレらも温泉行かない？露天風呂付きのいい部屋泊まってさぁ」

「えっと・・・それって、皆で一緒に慰安旅行でってことですよね？」

「決まってるだろ、2人きりでだよ」

堂林は温泉に誘いながらさつきの肩を抱いてきます。

さつきの頭は失礼のないように断ろうとする考えで一杯になっていきました。

「は・・・母が今、腰痛再発させちゃってて、面倒みなきゃ・・・だからすみません、ちょっと・・・」

どうにかこの場は断ることができたのですが、温泉に誘われたことで堂林が本気で自分を口説こうとしていることを理解します。

悩むさつきだったのですが誰にも相談することができません。

もしも騒ぎ立ててしまうと職場を追い出されるのは派遣社員の自分だということを理解しているためでした。

当時は金融危機とITバブルの崩壊によって就職氷河期だったのです。

そのため再就職することは非常に難しい状態となっていました。

「私が今上司から受けている事は言ってはいけない、絶対誰にも知られてはいけない、私どうしたらいいの？叫びたくても叫べない」

孤独のままセクハラに立ち向かうさつきの運命はどうなってしまうのでしょうか！？

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『大人の問題提起シリーズ さけび』を読んだ感想

様々なハラスメントが社会問題になっている現代だからこそ読んでおきたい作品になっていますね。

いかにセクハラが最低な行為であることかを再認識させてくれる内容だと思いました。

立場の弱い人間の痛みを実感することができる『大人の問題提起シリーズ さけび』！

目を背けたくなる最低な行為を描いているからこそ多くのものを教えてもらえました。

社会の常識を学ぶためにもこの漫画と向き合ってみてください。

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