ひらばのひとのネタバレ(漫画)!久世番子が描く講談師とは?

今回は「久世番子」先生の『ひらばのひと』という漫画を読んだので、ご紹介していきたいと思います。

※記事の中にはネタバレ部分がありますので、お先に立ち読みをお勧めします!

 

『ひらばのひと』はこんな漫画(あらすじ)

講談とは張扇と扇子で釈台を叩きながら脚色した歴史を読む話芸です。

フィクションを話してお客を楽しませる落語との認知度が歴然としているため、講談師は絶滅寸前になっていました。

女流講談師の龍田泉花は将来に不安を感じながら芸の道を極めようとしています。

しかし唯一の弟弟子である泉太郎の素直過ぎる言動にヤキモキしたり、まだまだ講談師として一人前とは言えません。

それでも講談の魅了された泉花は周囲の人々に支えられながら高き目標に向かって歩き続けていくのです。

講談の世界を舞台にした『ひらばのひと』

今回は伝統芸能を題材にしたヒューマンドラマの魅力についてネタバレを含みながらご紹介していきます。

軍記物の勇壮な場面を独特な節で読み上げる修羅場(ひらば)にご注目ください。

 

『ひらばのひと』の魅力紹介(ネタバレ含む)

前編

初めて寄席を訪れた女性客が落語家の登場を心待ちにしています。

すると舞台に講談師の龍田泉花が登場しました。

泉花
「相済みません、落語ではなく講談!講談に一席お付き合い願います」

落語ではないことを知った女性客が帰ろうとします。

泉花は後で落語家も登場することを説明してから講談と落語の違いについて説明を始めました。

両者はまず見た目が違っていて講談師は右手に張扇、左手に扇子を持ち釈台を叩きながら話を進めていきます。

泉花
「落語は噺ですが講談は読み物、落語はフィクション、講談は歴史を脚色した物語、落語家は男が多いが講釈師は女が多い!」

説明している途中で女性客はトイレに行ってしまいました。

このように落語ほど講談は人気がありません。

泉花が講談を終えて舞台袖に戻ると、兄弟子がこの日の一門会に参加できないというメールが届いていました。

弟子たちが困っていると80歳の師匠が二席を担当すると言ってくれます。

師匠の講談を弟子たちは舞台袖で勉強させてもらうことにしました。

泉花
「泉太郎もっと近くで聴きな、二ツ目のあたしより前座のあんたのほうがしっかり勉強しなきゃ」
泉太郎
「ありがとうございます」

弟子たちが勉強する中、師匠の講談が無事に終了します。

しかし楽屋に戻ると師匠は年齢のため疲れ切っていました。

その中で楽屋見舞いに来た常連客が泉太郎の講談を褒めてくれます。

泉花がお客に説明した通り講談の世界にはほとんど男性が居ません。

常連客は講談を男性が読むものだと考えているので泉太郎のことを褒めているのです。

その様子を見ていた姉弟子たちは面白くありません。

姉弟子たちは楽屋で不満を爆発させることにしました。

泉花
「あのー姉さん方・・・そーゆーの普通本人のいない所で言いますよね!?」
泉太郎
「姉さんたちの話勉強になります」

目の前で調子に乗っていると言われても泉太郎本人は全く気にしていません。

そんな泉太郎に姉弟子たちは、若くて男性だからちやほやされているだけだと指摘します。

しかし泉花は泉太郎に講談の才能があると感じていました。

才能に気づいたのは師匠の家で稽古をつけてもらっている泉太郎を初めて見た時のことです。

泉花
「それは修羅場読みという講談独特の滔々と流れるような読み方で、荒削りだし未熟なんだけど惹きつけられてしまったんだ」

当時のことを思い返していると、姉弟子たちが泉太郎にきつく当たり始めました。

普通なら男性は落語の道へ進むのに、泉太郎が講談師になろうと思ったのは競争率が低いと思ったからだと指摘します。

泉太郎
「オレ講談好きですから」

泉太郎は純粋な気持ちで講談の世界に足を踏み入れました。

そのため泉花が姉弟子のパワハラを止めに入ります。

すると自分たちの時はもっと酷かったと指摘されました。

確かに姉弟子の言う通り女性という理由だけで偏見されたことがあります。

泉花
「男に生まれたかったなんて思ったことないけれど、男であることがこんなに眩しく感じるなんて」

家に帰ると泉花は湧き上がった感情を夫に放しました。

嫉妬かも知れないと言われるのですが、泉花に湧いた感情はそんな簡単なものではありません。

泉太郎のことを見ていると自分の押し込めたダークサイドに気づかされるような気分になるのです。

夫と話していると猫の源蔵がごはんを欲しそうに鳴き声を上げました。

源蔵は泉花が独身時代に拾った時、家に帰ると羽織に向かって泣いたことから付けられた名前です。

しかし夫にはこのエピソードから源蔵という名前にした理由が分かりません。

泉花
「うそ、清くん講釈師の夫なのに赤垣源蔵知らない・・・?」

赤垣源蔵は討ち入りした赤穂四十七士の一人で、源蔵には疎遠ながらも血肉を分けた兄がいました。

討ち入りの前日、今生の別れを告げるため源蔵は徳利を片手に兄の屋敷を訪ねます。

兄が不在だと告げられた源蔵は、仕方なく兄の羽織に向かって思いの丈と別れを告げて帰っていきました。

これが“赤垣源蔵徳利の別れ”という講談です。

切なくて良い話ですが泉花は講座で披露するつもりはありません。

その理由は寄席では明るいネタが好まれるためです。

しかし“赤垣源蔵徳利の別れ”が泉花と泉太郎の運命に大きく関わっていくのでした。

 

 

講談師にスポットを当てるという発想が素晴らしいと思いました。

しっかりと取材した努力も感じられますし、伝統芸能を広めたいという情熱も伝わってきますね。

日本一チケットの取れない人気講談師が全面監修した『ひらばのひと』

講談の演目も数多く登場するので講談を知らなくてもスラスラ読める物語になっています。

話題になっている講談について色々と学ぶきっかけにしてください。

後編

源蔵という名前の由来を夫に説明した翌日、泉花が寄席で話す講談についてファミレスで考えています。

寄席のお客は落語が好きな人が多いので“赤垣源蔵徳利の別れ”のような切ないネタは好まれません。

悩んでいると後ろの席から泉太郎の声が聞こえてきます。

泉太郎は落語の師匠に食事を奢ってもらっていました。

そして講談を辞めて落語に来いと誘われています。

話を聞いてしまった泉花はモヤモヤした気持ちを抱えながら高座に上がりました。

泉花
「祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり、おごれる者も久しからず、今や平氏も都落ち、源氏との戦に負けを重ね寿永四年の二月屋島の沖・・・かの有名な扇の的の一席でございます」

講談を語り始めた泉花だったのですが、頭の中には落語に誘われた泉太郎のことがよぎっています。

泉太郎が辞めてしまえば師匠や常連は悲しむかもしれません。

しかし泉花は泉太郎が辞めてくれると自分のダークサイドな一面と向き合わずに済みます。

講談に集中できずにいる泉花は修羅場(ひらば)を迎えてしまいました。

泉花
「与一宗高その日の打拵は紺村濃の直垂に赤糸縅の大鎧!弓は引くので兜は被らず烏帽子を頂き白綾の後鉢巻」

与一宗高が強弓を構える姿がテンポよく表現されていきます。

ですがここで集中できていない泉花の講談がストップしてしまいました。

泉花
「・・・失礼いたしました、講談は人の名前や着物の色文様までいちいち全部説明するもんでしてええとー、あ、思い出してきた!」

何とか笑いに変えて高座から降りていきます。

その様子を舞台袖で泉太郎が見ていました。

泉太郎
「お疲れさまでございました、大丈夫ですか姉さん」
泉花
「誰のせいだと思って・・・」
泉太郎
「・・・すみませんでした」

弟弟子の前で恥をかいた泉花はついつい八つ当たりしてしまいます。

すぐに自分の集中力不足だと思った泉花は一人にしてもらうことにしました。

一人になった泉花はまるで赤垣源蔵のように泉太郎のジャケットを見つめます。

泉花
「姉弟子と弟弟子・・・姉弟なのに、いや姉弟だから、赤垣源蔵も実の兄と面と向かって会えてたら心のうちは言えなかった?泉太郎あたしはあんたが羨ましい」

師匠や常連客が泉太郎を褒めている様子を見る度、泉花は苦しくなっていました。

その様子を見ているうちに女性はどんなに頑張っても男性には敵わないと思うようになっています。

切ない胸の内を泉太郎のジャケットに向かって吐き出すことにしました。

泉花
「あんたがいると辛くなる、いなくなればいいと思う、それなのに・・・あんたがどんな講釈師になるかその姿を見てみたいとも思うんだ、どうかやめないでほしい」

面と向かってこんなことは言えません。

しかしいつの間にか泉太郎が後ろに立っていました。

泉太郎
「やめませんよ、え?オレ講談やめることになってるんですか?」
泉花
「だってあんたファミレスで万喜助師匠に・・・」
泉太郎
「あー・・・あれは師匠のネタです、オレをいじる時の」

泉太郎は講談を辞める気などありません。

全ては泉花の勘違いだったのです。

泉花
「いや待て!やっぱ信じられないわ、泉太郎あんたどおおおして講談を選んだの!?」
泉太郎
「えー・・・そりゃあ・・・20代の男ってだけでオレみたいなのでもちやほやされるからでーす」
泉花
「にしき姉さんの言ってたとおり!?あああ、やっぱり若い男ムカつくわー」

結局この日も泉花の怒りを買ってしまいました。

しかし泉太郎は本心を打ち明けた訳ではありません。

講談では源蔵が帰った後、入れ違いで兄が帰ってきます。

兄は源蔵が討ち入りに参加することを伝え訊くと、源蔵が持参した徳利でお酒を飲みました。

泉太郎
「姉さんたちがいたからですよ、姉さんたちがしぶとく読み続けていたからオレは講談と出会えたんだ、なんて本人の前では絶対言わないですから」

泉太郎が講談を選んだ理由は姉弟子たちのおかげだったのです。

それでも泉花と同じように面と向かって自分の気持ちを伝えることはしません。

ぶつかり合う2人なのですが性根では源蔵と同じように照れ屋なのです。

泉花
「前途多難な芸の道、果たしてこれからどうなるか、わたくし泉花は二ツ目から真打になれるのか!?そしてそして泉太郎は一人前の講釈師になれるのか!?」

ここからさらに面白くなる本編の続きは実際に漫画を読んでお確かめください。

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『ひらばのひと』のネタバレ(漫画)!鋳掛松が繋ぐ運命とは?

2021.12.02

 

『ひらばのひと』はこんな人にオススメ

登場人物の感情を丁寧に表現しているヒューマンドラマを探している人にオススメです。

講談や落語にあまり関心がない人ほど読むと夢中になれる作品になっていますよ。

現状に悩みながら目標に向かって努力するヒロインたちのキラキラした姿に感動できる『ひらばのひと』

登場人物の置かれた状況と講談の演目が見事にマッチしていく考え抜かれたストーリーに仕上がっています。

講談の面白さをこの漫画から知ってみてください。

 

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